HERR*SOMMER-夏目

現代ドイツ作家・詩人の紹介を主に・・・

* 「美しき惑ひの年」 カロッサ より 

* 「美しき惑ひの年」;Das Jahr der schonen Tauschungen はカロッサ;Carossaの医師を目指して学ぶ学生時代を扱った短篇だが、こんな詩も挿入されており、見事な訳者の訳詩であるが、何年か前に訳したことがあり、SNSで発表し多くの人に読んでもらったことも…

* 郷愁 : ヘッセ 「ペーター・カーメンツィント」 青春彷徨 第七章 

高き空に 浮かぶ 白雲のごと 美わしくも 遠きなるかな 汝れ エリーザベトよ !.. 白雲は 万里を さすらひ そを 汝れは 見ずとも 今宵も 闇夜なれば 夢に 見つらん 嗚 輝ける 汝が すがたよ!... 白雲の 行方を 恋ふがごと 憧がれ 慕ふかな われ !.... 甘く 汝…

* トルストイの「アンナ・カレーニナ」 第一部 

「幸福な家庭は、みな似通っているが、不幸な家庭は不幸な様相もさまざまである。」 「アンナ・カレーニナ」のこの冒頭部は、よく知られた一節だが、この長編の第一部の11には、ハイネのこんな詩の一節も挿入されている。: 抑えられない この世の欲情に 打ち…

* 魂の祈り  ダンテ「神曲」 より

ダンテの「神曲」は周知のように、地獄篇・浄罪篇・天堂篇の三部構成からなっている詩篇だが、その浄罪篇の第十一歌では、ほぼ主の祈りに似せて、傲慢の罪を償うべく魂の祈りを綴っている ・・天にまします われらの父よ 願わくば 聖名(みな)と 聖能(みちか…

* ディオティーマよ!...あなたは何処に?・・ ヘルダーリン 「ヒューペリオン」 より

1770年生まれのヘルダーリンは、シラーとの交友もあったドイツの純粋な魂の詩人で、73年の全生涯の後半生、30数年を精神の闇に暮らした悲痛な詩人でもあったのだが、彼の評価は高い。その彼の唯一完成した散文作品に、手紙形式で書かれた「ヒューペリオン」…

* 美貌と才知 ・ スタンダール「赤と黒」 より

《 彼女はアンリ三世やバッソンピエール時代のフランスにあったような、英雄的な感情にしか、恋愛という名前をあたえなかった。》 * 因みに、バッソンピエール(1579-1646)は、元帥にして有名な外交官だが、ホフマンスタールの短編「バッソンピエール奇譚」(…

* 滑稽歌劇  スタンダール 「赤と黒」 より

'おお 春四月の日の 定かならぬ 輝き 恋愛も これに似たるいま 陽の輝きに あふるると見れば やがて 次第に 雲は すべてを奪い去る ' シェイクスピア 第一部 第十九章 導入部 もし革命が勃発したら、どうしてジュリアン・ソレルがロラン(フランス革命時代の…

* たくらみと恋 Kabale und Liebe

貴族で宰相の息子フェルディナントと市民の娘ルイーゼの悲恋を描いて多大の成功を収めた戯曲に「たくらみと恋」があるが、これはゲーテと並び、ドイツ古典主義を代表する詩人であり戯曲家シラーの悲劇作品で、シラーの言葉にこんな一節がある。曰く: 「とり…

* ホラティウスの言葉 より

ローマの英雄ホラティウスの言葉に、こんなのがある。: nil mirari.....その意味は、決して、心を動かすことなかれ、というのだが、これはドイツ語では、Sei gefuhllos,となろうか。 因みに、これはゲーテの詩の一節に見えることばだが、この後にはこんな風…

* 老子と「道徳経」 承前  ブレヒト 散文詩 

肩越しに 老賢者は 男に目を向けた 男は 破れた衣を つづって着 履物は 履いているでもなく 額には 太い皺が 走り みるからに 勝利の女神とは 無縁の様子だった それなのに 見上げたものだ-- 老賢者は つぶやくと 声高に云った : 求められたからには 応ずる…

* 或る税関番と賢者・老子   ブレヒト 散文詩 

彼は 70になり 肉体に 衰えを感じていた すると 安らぎを求め 老賢者の 心が つよく動いた 天なる下では 仁慈も廃れ 邪悪が 満ち始めていた 彼は こころを 決めるや 入用なものを 荷造りした 毎晩 紫煙を燻らす 煙管や 愛読書の 一巻の書物は なかでも はず…

* 戦後ドイツ作家  作品年表 4   1945年以降

・1976:「探究旅行」ヴィドマー 「限りなく透明に近いブルー」村上龍 「枯木灘」中上健次 ・1977: 「心情飛行」ヘアブルガー 「ひらめ」グラス 「エーゲ海に捧ぐ」池田満寿夫 「金閣炎上」水上勉 ・1978: 「アイヒェンドルフの没落と 他のメルヒェン」 ハイ…

* 戦後ドイツ作家 作品年表 3.  1945年以降

1970: 「もはや 誰も知らない」*ブリンクマン 「大阪のイエズス」ヘアブルガー 「男たちの円居」古井 由吉 「試みの岸」小川匡夫 1971: 「デトレフの模擬酒場」 フィヒテ 「婦人のいる 群像」ベル 「夏の闇」開高健 「嵯峨野明月記」辻邦夫 1972: 「長い別離…

* 戦後ドイツ作家 作品年表 2.  1945年以降

1958年: 「父の髭がまだ赤かったころ」シュヌレ 「今この時に」ヴォーマン 「螺旋」ノサック 「夢遊病者のホテル」詩 メッケル 1959年: 「九時半の ビリアード」ベル 「ヤーコプについての推測」ヨーンゾン 「ブリキの太鼓」グラス 「海辺の光景」安岡章太郎…

* 戦後ドイツ作家の群像  作品年表 1945年以降

1945 年以降 小説・散文・戯曲・詩 ・附 日本の戦後作家: 1946 ; 「死霊」埴谷雄高 「暗い絵」野間宏 1947 : 「ネキア」或る生存者の報告 ノサック 「聖書に曰く」戯曲デュレンマット 「戸口の外」戯曲ボルヒェルト 「斜陽」太宰治 「重き流れの中に」椎名麟…

* 現代ドイツ作家  一覧  代表作  1945年以降 ⑶

・1936. ビールマン *坂上弘 ・1937.ニコラス・ボルン~79.「第二日目」R.65. タッシャウ H. 古井由吉「杳子」 ・1938 ヴィドマー U. 「アーロイス」Erz. 68. ・1939. エーリカ・ルンゲ 女流 「ボットゥロパー調書」 ・1940 ブリンクマン ~75. 「…

* 現代ドイツ作家 作品一覧   ⑵

1925:コムリンガー 詩人 三島由紀夫~70.「仮面の告白」49. ヤントル 詩人 「金閣寺」56. 丸谷才一「たった一人の反乱」 1926 : バッハマン 女流詩人 ~73.「猶予期間」G.53. グリューン 「夜を二倍持つ男」R.62. 辻邦夫「安土往還記」68. 井上光晴 河野多恵…

*現代ドイツ作家・一覧 &代表作: 1945年以降

《生誕年》《作家と没年》《代表作》《日本の戦後作家》 ・1899 ランゲッサー「消えない印」R.46. 石川淳 ~87 ~50. 女流 宮本百合子~51 ・1900 ゼーガース 女流 「死者はいつまでも若い」49. ・1901 カシュニッツ ~74. ノサック ~77.「死人とのインタ…

* ケンタウルス族の賢者 フィロン: 「ファウスト」 第二部 第二幕 より

・ヒロンは半人半馬の怪物であるケンタウルス族の賢者であり、野蛮で粗暴な一族の中で例外的な存在である。 7331行 ~: ファウストとヒロンのここでの対話も脚韻を踏み書かれている Dialog im Sprechvers: ヒロン: 何じゃ、何ごとじゃな ファウスト: 馬をお…

* 韻律学 Metrik ゲーテ「ファウスト」 第二部 第一幕 

・4728~5064行 : この箇所は対話形式の韻文で書かれ、4-5の揚音・強音が自由に、あるいは、相互に繰り返されていく。 4955行 ~ : 皇帝の 玉座の間にて: ・天文博士 :Astrolog 、(但し、メフィストフェレスも小声で同じ言葉を後から繰り返し、しゃべってい…

* ゲーテ 「ファウスト」 真夜中 承前

Entferne dich :さっさと 立ち去ることだな 用はない (Faust) Ich bin am rechten Ort: いいえ 居させてもらうわ 此処に Die Sorge ファウスト: (始めは 怒りが込み上げてきたが、やがて、気を静めて) ならば 呪文は 金輪際 口にせぬことだ 憂い: わたしの声…

* ゲーテ 「ファウスト」 第二部 第五幕 真夜中 より

真夜中に四人の灰色の女が来て、ファウストの棲む宮殿から、第一の女《不足》Mangel、第二の女《罪》Schuld、そして第四の女《苦しみ》Nothの三人は、受け入れてくれないものと観念して去ったあと、鍵穴からそっと入り、残ったのは第三の女《憂い》Sorgeであ…

* 韻律学 13 ゲーテ 「ファウスト」 第二部第三幕 より

9435- 41行: Faust; このファウストの台詞は古代ギリシアのトリメーター、即ち、3音格詩で書かれている。 この不届きな 邪魔者めが 厚かましくも 押し寄せてきたか こんな 非常なときに 無意味な 騒ぎは 許されまいぞ どんな 美しい使者も 悪い便りを もた…

*韻律学 ⒓ メフィストフェレスの闖入 ゲーテ「ファウスト」第二部第三幕 より

・9419- 34行: Phorkyas 次のフォルキアスの台詞は、トロケーウス、揚抑・長短格の4脚で書かれ、パロディー化しつつ韻を反復している。zB.21行までは3回、9422行以下は3行ごとに5回、韻を踏んでいいる。例えば、こんな風に:Fiebeln-Liebeln-Grubelnと3…

*韻律学 Metrik  ⒒ 「ファウスト」 第二部第三幕 より

前回はヘレナとファウストの愛の告白の場面だったが、それを讃える合唱部,Chor:9385-9410行は、トリアーデ、即ち、1.シュトローフェ2.アンチシュトローフェ、そして3.エピシュトローフェの構成で書かれている。 ・9401~ お二人は 次第に 身を 寄せあ…

*韻律学 Metrik 10 愛の告白 「ファウスト」第二部第三幕 より

*9377- 84行 :Helena und Faust この箇所はヘレナとファウストとの愛の告白の場面で、毬を互いに投げあい受け取るように、言葉と意味を交わしながら、二人の心がやさしく結ばれてゆく。韻はヤンブスの5脚で、無韻のブランクフェルス、そして脚韻はパールライ…

*韻律学 Metrik 9. 「ファウスト」 第二部第三幕 より

*9246~ 72 :Helena : *このヘレナとファウストの対話の場面は、9192以下、そして、9333-45のFaustの台詞や、9356-76のヘレナとファウストの対話の場面と同様、それまでのトリメーターに代わって、近代的なブランクフェルス、抑揚・短長格の5脚無韻詩で書か…

*韻律学 Metrik :ゲーテ「ファウスト」 8. 第二部 第三幕の2.

2. 城の中庭 Innerer Burghof 9127-- 9573 より: * この場面の冒頭、9127- 91は、やはり、古代ギリシア悲劇の無韻の音韻形式で書かれている。すなわち、ヤンブス・抑揚・短長格のトリメーター・3音格詩である。そして、これは合唱隊、あるいは、合唱隊を…

*韻律学 Metrik 7. ゲーテ「ファウスト」 第2部 第3幕 より

*8909- 9126 行 ;-- ・この箇所はフォルキアスの台詞、「薄曇りの朝の間から、人目を喜ばせ、輝きまばゆく、大空を支配する真昼の太陽よ!...・・」以下、第三幕のその1の最後までの場面であるが、ここではそれまでのヤンブスのトリメーター、すなち、短長・…

*韻律学 Metrik 6. 第二部 第三幕 「ヘレナ」 より

* 8810- 8825 行 : この箇所は、詩句問答Stichomytie 、隔行・対話形式で書かれているが、それはトロヤの娘たちによる合唱の女たちと、フォルキアスの間で交わされる華々しい口争いで、売り言葉に買い言葉の、互いに、侮蔑と誹謗の言葉を投げ合う、悪口合戦…