HERR*SOMMER-夏目

現代ドイツ作家・詩人の紹介を主に・・・

* ケンタウルス族の賢者 ヒロン: 「ファウスト」 第二部 第二幕より

・ヒロンは半人半馬の怪物であるケンタウルス族の賢者で、野蛮で粗暴な一族の中で例外的な存在である。 7331 ~: ファウストとヒロンの対話も脚韻を踏み書かれている。 Dialog im Sprech-Vers: ヒロン: 何じゃ、何ごとじゃ ファウスト: 馬をお止めください …

*早呑み込みで お前たちは・・:

2.城の中庭 Innerer Burghof: 9127-- 9573 : この場面の冒頭、9127- 91は、やはり、古代ギリシア悲劇の無韻の音韻形式で書かれている。すなわち、ヤンブス・抑揚・短長格のトリメーター・3音格詩である。そして、これは合唱隊、あるいは、合唱隊を指揮す…

* 四人来て 三人帰ったな: 「ファウスト」第二部 第五幕 真夜中より

真夜中に四人の灰色の女が来て、ファウストの棲む宮殿から、第一の女《不足》Mangel、第二の女《罪》Schuld、そして第四の女《苦しみ》Nothの三人は、受け入れてくれないと観念して去ったあと、鍵穴から そっと入り、残ったのは 第三の女《憂い》Sorgeである…

* トルストイの「アンナ・カレーニナ」: 第一部 

「幸福な家庭は、みな似通っているが、不幸な家庭は不幸な様相はさまざまである。」 「アンナ・カレーニナ」のこの冒頭部は、よく知られた一節だが、この長編の第一部の11には、ハイネの詩の一節も挿入されている。: 抑えがたい この世の欲情に打ち勝てば ど…

*ウクライナの女 リーディア: 

「ねえ、あのヒラメのこと、まだ覚えていらして?..」と訊ねてみたが、いいえとロベルタは云うのだった。 「でも、忘れるはずないわ。大きなヒラメ焼いたでしょう?..」こう云ったにも拘らず、ロベルタは覚えていないの、と繰り返す。けれども、それは終戦直前…

* ヘッセ「ペーター・カーメンツィント」: 青春彷徨 第七章から 

高き空に浮かぶ 白雲のごと 美わしくも遠きなるかな エリーザベトよ !.. 白雲は万里をさすらひ そを汝れは見ずとも 今宵も闇夜なれば 夢に見つらん 嗚 輝ける汝がすがた!... 白雲の行方を恋ふるがごと 憧がれ慕ふ... 甘く汝れを想ひえがきし郷愁!.. *** 以前…

*「ガブリーニと薔薇椋鳥」 : ベルゲングリューン より

或る日のこと、小さな僻村に棲むガブリーニが蹄(ひづめ)の音を耳にした。と、眼の前に 一人の騎兵が立っていた。かれは豪華な甲冑(かっちゅう)をつけている。が、武器は携えてはいなかった。その代わりに、オリーブの枝が巻かれている銀のステッキを持ち、騎…

* 大都会 :リリエンクローン 

都会の大海原; 目の前を 慌ただしくすぎゆく人 また人・・ 一瞥を投げ と もう過ぎてゆく どこからかピアノの響き 虚無の大海原; 目の前に 滴るしずく一滴 また一滴 あの柩は誰のもの 一瞥を投げ と もう過ぎてゆく どこからかピアノの響き 都会の大海原; 葬…

*魅せられしもの : ホフマンスヴァルダウ

噫! 魂を歓びで 駆り立てしものよ そは 天国なるワインよりも甘く 汝れより注(つ)がれしをのぞみ 噫! 富める宝物より好ましきものよ そにより こころ強くもなり はたまた 感情の 傷つきしことありしも そは薔薇の輝きよりも こころ満たされ どんなルビーとも…

*「若い二人」Die Beiden: ホフマンスタール

「美しき惑ひの年」;Das Jahr der schonen Tauschungen はカロッサ;Carossaの医師を目指して学ぶ学生時代を扱った短篇で、こんな詩も挿入されており、前に訳したことがあり、親しみある詩である。: 「詩だよ!.. まだ印刷されてない。 詩人の自筆だよ」 フー…

*恋のいろはの手習いも結構・:メフィストフェレスの闖入 

・9419- 34: Phorkyas 次のフォルキアスの台詞は、トロケーウス揚抑・長短格の4脚で書かれ、パロディー化しつつ韻を反復している。zB. 21行までは3回、9422行以下は3行ごとに5回、韻を踏んでいいる。例えば、こんな風に: Fiebeln-Liebeln-Grubelnと3回…

* デュレンマットの「貴婦人、故郷に帰る」:

「貴婦人、故郷に帰る」はこんな内容である。:主人公のクララ・ヴェッシャーは若いころ、イルから誘惑され貞操を弄ばれ、娼婦と誹謗を受ける。が、世界で最も富んだ婦人となった。その彼女は62歳になると身体的には衰えてきたものの、滑稽なほどめかしこみ生…

*「饅頭男」が誹謗と中傷の弁護をする : W.ラーベ抄 ⑪

私はこうして、25 歳で発表した処女作「雀横丁年代記」以来、二十代には19篇、三十代 には17篇、四十代では16篇、五十代では10篇と発表してきたのだが、中でも、60歳の時に書き上げた「シュトップフクーヘン」(饅頭男)*44は、ある意味でその頂点に達しえた作…

*愛と惜別 : ザラー・キルシュ 

もう 行ってもいいのよ: 乙女は 月に云う 大きな馬車に 積み込まれた月 白い歯を見せ 頷うなづくと 転がるように 月は立ち去っていった 扉の引手を 押さえつけないで: 乙女は 風に云う 煤すすと雨まじりの風が 大粒の霰あられで みずからをも 鞭打っている …

*「人間の哀感」と徒然草・第七段  :

「あだし野の露」で始まる徒然草・第七段にみえる 深い人生観。 これと似て、ドイツの最も傑出したバロック詩人、グリューフィウスにもこんな詩がある。 人間の哀感 Menschliches Elende : 嗚呼 人間: それは 何?... かなしみの 棲家?...偽善に満ちた幸福の…

*トロヤの娘の合唱隊とフォルキアスとの悪口合戦:「ファウスト」第二部 第三幕 より

* 8810~ 8825 : この箇所は、詩句問答Stichomytie 、隔行・対話形式で書かれ、トロヤの娘たちによる合唱の女たちと、フォルキアスの間で交わされる華々しい口争いで、売り言葉に買い言葉の、互いに侮蔑と誹謗の言葉を投げ合う悪口合戦の態をなしている。 * …

*実験的な前衛詩: ヤントル より

不平家のオットくんーがドアをトントン叩く オットーが云う:入りたまえ 不平家くん 入りたまえ!... 不平家のオットーくんが入ってくる 不平家のオットーくんが 入ってくるや嘔吐した オットーは思わず胸糞が悪くなった なんてこった なんてこった!!....... *…

* 涼しき夜 : ハイネ

死よ そが涼しき夜の帷(とばり)ならば 生は蒸し暑き昼間だ はや黄昏て眠きかな 昼間 勤(いそ)しみて 疲れしゆゑに 噫 わが奥津城(おくつき)に 一本の木の伸び出できて 一羽の夜啼き鶯の囀(さえず)らん 唄ふは愛の歌にして 夢の中にて聞くも その歌ばかり H.H…

* 戦後ドイツ作家 作品年表 2. :

1958年: 「父の髭がまだ赤かったころ」シュヌレ 「螺旋」ノサック 1959年: 「九時半の ビリアード」ベル 「ヤーコプについての推測」ヨーンゾン 「ブリキの太鼓」グラス 「日本三文オペラ」開高健 1960年: 「赤毛の女」アンデルシュ 「死の棘」島尾敏雄 1961…

* 現代ドイツ作家 一覧・ 代表作: ⑶

1937: 古井由吉「杳子」 1942. ハントケ 「観客罵倒」66. 1943. ヴォンドラチェック 「嘗て、一日は銃創とともに 始まった」 Pr.82 丸山健二「千日の瑠璃」 ・1945. Mein Geburtsjahr * Petet Handke: ハントケ : 「ペナルティ・キックを受けるゴールキーパ…

* 戦後ドイツ作家の群像  作品年表:

1945 年以降: 小説・散文・戯曲・詩: ・附 日本の戦後作家: 1946 ; 「死霊」埴谷雄高 「暗い絵」野間宏 1947 : 「ネキア」或る生存者の報告 ノサック 「聖書に曰く」戯曲 デュレンマット 「戸口の外」戯曲 ボルヒェルト 「斜陽」太宰治 「重き流れの中に」椎…

* 山と雲と湖との平和 : ゲオルゲより

さらに色を変えた湖は 雲の上なる碧空を鮮やかに映す もう妖精の姿はなく 薄緑から青に 深紅から黄金に融け合ひ 淡い光が反射されて鏡となり煌めく: 傍らでは 巨大な陰 湖面を見据ゑ 波打つ湖面に 蒼白き光を受け 左は昏くとも 右は彩に煌めき 辺りは閑静に…

* 「祝福」:デーメル 「女と世界」より

ごらん 空が青く 燕が早や 飛ぶ魚のよう 濡れた白樺のうえ・・なのに 何故 きみは泣きたいの ?... きのう きみは失意で 剣に魂が貫かれていたね あの聖女のように でもきょう ぼくは歓喜し 両腕を高らかに拡げる すべての聖徒に倣ひ・・ さあ マリアよおいで…

* 鐘の音 :デーメル「女と世界」より

そして日暮れに ほっと一息したくなったら 鐘の音がなにを告げているか 耳を澄ましてごらん あちこちの小屋から立ち上る煙は 槲のこずえを温かく包み込み さあ お出でと云っている すると やがて蕾に蔽われた木の下では 木霊とともに そよぎが秘めやかに囁く…

* ディオティーマよ!...何処に?・: ヘルダーリン「ヒューペリオン」より

1770年生まれのヘルダーリンは、シラーとの交友もあったドイツの純粋な魂の詩人で、73年の全生涯の後半生、30数年を精神の闇に暮らした悲痛な詩人でもあったのだが、彼の評価は高い。 その彼の唯一完成した散文作品に、手紙形式で書かれた「ヒューペリオン」…

* 美貌と才知 :「赤と黒」より

彼女はアンリ三世やバッソンピエール時代のフランスにあったような英雄的な感情にしか、恋愛という名をあたえなかった。...... * 因みに、バッソンピエール(1579-1646)は、元帥にして有名な外交官だが、ホフマンスタールの短編「バッソンピエール奇譚」(アバ…

* 滑稽歌劇 :「赤と黒」 より

'おお 春四月 定かならぬ輝き 恋愛も これに似て 陽の輝きに あふるるも やがて次第に 雲はすべて奪い去る ' シェイクスピア 第一部第十九章 導入部より もし革命が勃発したら、どうしてジュリアン・ソレルがロラン(フランス革命時代の政治家)の役割を演じな…

* たくらみと恋 : Kabale und Liebe

貴族で宰相の息子フェルディナントと市民の娘ルイーゼの悲恋を描いて多大の成功を収めた戯曲に「たくらみと恋」があるが、これはゲーテと並び、ドイツ古典主義を代表する詩人であり戯曲家シラーの悲劇作品で、シラーの言葉にこんな一節がある。曰く: 「とり…

* ホラティウスの言葉 より

ローマの英雄ホラティウスの言葉に、こんなのがある。: nil mirari.....その意味は、決して、心を動かすことなかれ、というのだが、これはドイツ語では、Sei gefuhllos,となろうか。 因みに、これはゲーテの詩の一節に見えることばだが、この後にはこんな風…

* 老子と「道徳経」 承前 :ブレヒト  

肩越しに 老賢者は 男に目を向けた 男は 破れた衣を つづって着 履物は 履いているでもなく 額には 太い皺が 走り みるからに 勝利の女神とは 無縁の様子だった それなのに 見上げたものだ-- 老賢者は つぶやくと 声高に云った : 求められたからには 応ずる…