HERR*SOMMER-夏目

現代ドイツ作家・詩人の紹介を主に・・・

文学・学問・詩: 余滴

*「ガブリーニと薔薇椋鳥」 : ベルゲングリューン より

或る日のこと、小さな僻村に棲むガブリーニが蹄(ひづめ)の音を耳にした。と、眼の前に 一人の騎兵が立っていた。かれは豪華な甲冑(かっちゅう)をつけている。が、武器は携えてはいなかった。その代わりに、オリーブの枝が巻かれている銀のステッキを持ち、騎…

* デュレンマットの「貴婦人、故郷に帰る」:

「貴婦人、故郷に帰る」はこんな内容である。:主人公のクララ・ヴェッシャーは若いころ、イルから誘惑され貞操を弄ばれ、娼婦と誹謗を受ける。が、世界で最も富んだ婦人となった。その彼女は62歳になると身体的には衰えてきたものの、滑稽なほどめかしこみ生…

*実験的な前衛詩: ヤントル より

不平家のオットくんーがドアをトントン叩く オットーが云う:入りたまえ 不平家くん 入りたまえ!... 不平家のオットーくんが入ってくる 不平家のオットーくんが 入ってくるや嘔吐した オットーは思わず胸糞が悪くなった なんてこった なんてこった!!....... *…

*ディオゲネスに関する逸話 : クライスト奇談集 より

古代ギリシアの哲学者として知られるディオゲネスは、ある時、尋ねられた。 「死後に埋葬されたいところは、どんなところでしょうか・・」 すると、彼が答えて云うには、「野原の真ん中でよかろう」 「えっ!..なんですって?..」と誰かが言った。 「えっ、そ…

* 「ナポレオン軍遠征に関する逸話」: クライスト奇譚集 より

「1809年、皇帝軍遠征に付き従いて」と題された書物のなかで、ナポレオン皇帝に関して、次のような逸話が記されている。 それによると、作者はナポレオンの力量に憐憫の念を感じつつ、こんな奇妙な一例を伝えているのである。--: 周知のごとく、アスペルンの…

* 或る転轍手の冒険 : アルトマン より

U.P.鉄道の或るポイント切り替え人の責務はおおきかった。固より、彼には人命に対して、重い責任が課せられていたからに他ならない。 彼はいつも、一冊の愛読書を携えていたその習慣は10年来、変わってはいなかった。そして、また、読むのは77ページまで、そ…

*夏は夜:「枕草子」より : 名作のドイツ語翻訳

Im Sommer ,ich mag die Nacht gern, nicht nur wenn der Mond scheint, sondern das Dunkel auch, als die viele Gluhwurmchen einander die Wege in ihren Flugen kreuzen, oder als es regnet auch ...... ・夏は夜。 月のころはさらなり。 闇もなほ。 蛍…

*ボヘミアニズムと市民気質

青春小説「トニオ・クレーゲル」以後、「魔の山」Der Zauberberg ほか数々の大作を書いたT.マンには、小説家としてのボヘミアニズムと市民的勤勉な精神が共存していた。 これに共感をおぼえた「雲のゆき来」ほか多くの作品で知られる小説家、並びに評伝作家…

*現代ドイツの作家 : メッケルの 「ライオン」を読む

嘗て、「現代作家論」シリーズとして文学界に紹介された清水良典氏の「川上弘美覚書」には、フツウの≪私≫の行くえが掲載されていて興味を覚えたのを思いだすのだが、そこには、こんな風なことがかかれていた。曰く、: 『神さま』の冒頭は、"熊に誘われて散歩…

*西洋の現代文学に関して:

・西洋の現代文学に関して:-- 世界をラジカルに懐疑し、信じられない、という立場の代表が、フランスの実存主義の作家、例えば、サルトルとカミユならば、ドイツ文学圏の作家であるカフカは、世界観はこれに近いが、異なるのは、いかにしたら、それから打開…

* 後朝 (こうちょう) の別れ : 「枕草子」

七月は、めっちゃ暑いのよね。なので、あちこち開け放して夜を明かしているのよ。満月の日など、真夜中に、よく目が覚め外を眺めると、素敵なものよ。闇夜もまた、捨てたものではないわ。有明の月も、実にいいのよ。 でね、そんな有明のころ、人の気配がして…

*出会いのエロス・: ホフマンスタールより Erotische Begegnungen

ホフマンスタールは「道と出逢い」で、こんなことを書いた。 「すべての孤独な出逢いには、 なにかしら非常に美味なものがともなう。*1 エロス本来の決定的な所作は、抱擁ではなく、出逢いである *2. 彼はまた、こんな一節を引用してノートする。 「わたしは…

* カサノヴァの寂寥:

鴎外の翻訳「みれん」Sterben などでも知られ、わが国でも一時、よく読まれた19世紀末のオーストリアはウイーンの作家にシュニッツラーがいるが、彼の作品に「カサノヴァの帰郷」Casnovas Heimfahrt というのがある。 カサノヴァは周知のごとく、ドン・ファ…