HERR*SOMMER-夏目

現代ドイツ作家・詩人の紹介を主に・・・

*出会いのエロス・ ホフマンスタール 散文集より Erotische Begegnungen

 

ホフマンスタールは「道と出逢い」で、こんなことを書いた。

「すべての孤独な出逢いには、 なにかしら非常に美味なものがともなう。*1   エロス本来の決定的な所作は、抱擁ではなく、出逢いである *2. 」

   彼はまた、こんな一節を引用してノートする。

「わたしはヤケの子、アグルの語ったことを想いおこした。彼の最も不可解で奇異なことを記憶していたからであるが、それ即ち、<飛ぶ鳥の、空に留めたる道筋と、乙女のうちに宿りし男の痕跡>というものである。     

 それでは、いったい、アグルとは誰なのか。。鳥の空に残す、眼には見えない道筋を、何よりも神秘としたあのアグル。 

 ホフマンスタールはある時、こんな夢を見る。<一人の若い女が、天幕の中の黒ずんだ紅い敷物の上に、ふせっていた。その女は形容のできないほど美しい女だった。そして、今しも彼女の抱擁を逃れて、ひとりの痩せた大男が立ち上がり、私の眼の前を、がらんとした天幕を横切り、反対側の壁のほうに通り過ぎて行ったのだ。 

 この男は頭にトルパンを巻いた老人であった。・・老いてなお、逞(たくま)しさの残る老人であった。けれど、上半身裸の、すらりとしたその体や、長くほっそりとしたその腕は、若者の腕のようで、そこには軽快さと大胆さが漲(みなぎ)っていた。・美しき若い女は哀願しながら立ち上がると、やさしく彼の名を、頻(しき)りに呼んでいるようだった。

その彼の名こそ、何を隠そう、アグルその人だったのである。 

 Aus:  H.von Hofmannsthal  :   Wege und Begegnungen

Reclam   ebd.  S. 26ff