HERR*SOMMER-夏目

現代ドイツ作家・詩人の紹介を主に・・・

*F.デュレンマットの戯曲  「物理学者」

 

 1921年、スイス生まれのデュレンマットのデヴュー作は47年に上梓した戯曲「聖書に曰く」であるが、彼は最初に結婚した女優ロティー・ガイスラーの死後、52年にはシャルロッテ・ケールと再婚したという経歴を持っている。

 彼の世界的に成功を治めた作品は56年に上梓した悲喜劇「貴婦人、故郷に帰る」だが、もう一つの成功作は、数ある中でも「物理学者」を挙げることができるであろうが、これは次のような内容である。即ち、物理学者のメービウスは、彼の天才的な<あらゆる可能性を秘めた発明のシステム>が人間性を損なうのではないかと怖れているのである。そこで彼はみずからの身と彼の知識を道化帽の下に隠す二人の互いに競い合う諜報密使は、彼らも同様に狂気を装っているのだが、この物理学者のあとを追って女性医師マーティルデ・フォン・ツァーントの私設の精神病院入れられているが、これは固より、彼から知識を奪い取るためなのである。だが、やがて、二人の仮面が剥ぎ取られると、物理学者は次のように確信するのである。:つまり、世界の権力に仕えるよりかは、精神病院にいて自由であるほうがよいのではないかと。そしてまた、その際、彼は思うのである。-

「我々の学問は恐るべきものになってしまっているのだ。我々の研究は危険極まりないものになってしまっているのだ。そして、あまつさえ、われわれの認識は殺人的なものになってしまっているのだ。」と。更に、彼はこうも思うのであった:「我々はこのまま精神病院に居残るか、それとも、世界が一つになるかだ。   

 この作品で、作者デュレンマットにアプリオリに見えていたのは、<狂気なのは、この精神病院に入れられているクランケではなく、実は、あの猫背の女性医師なのだ。>ということなのである。    

  *Friedrich Dürrenmatt:   Aus: K. Rothmann   Dt.sprachige Schriftsteller seit 1945 

     Reclam  ebd.  S. 116ff..               訳 : 夏目 政廣