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HERR*SOMMER-夏目

現代ドイツ作家・詩人の紹介を主に・・・

*美食家ルクルスと、詩人 ルクレティウス ブレヒト より

 

老いた前将軍ルクルスは、嘗て、全盛期にアジアに出征していたとき、ポンペイウスは、あらん限りの陰謀を巡らし、彼のいない間に彼を排斥していた。が、このポンペイウスも、ルクルスが真のアジア征服者だと崇められていることは、先刻承知はしていたのだ。

・紀元前63年初期、ローマは政情が非常に不安定であった。ポンペイウスはそのころ、長期にわたって出征し、アジアを竟に、征服していた。すると、この凱旋将軍の帰還が今を遅しと望まれていたのだ。

・緊迫がつづいていたこの頃の或る日、ティベル河畔の宮殿の大庭園の一角で、小柄で痩せたひとりの男が、大理石の階段の上で、一人の訪問客を待ち受けていた。それは前の将軍ルクルスであったが、出迎えていた客人というのは、裸足で歩いてきた詩人、ルクレティウスであった。

・ルクルスはルクレティウスをこころより歓迎すると、小さなホールへと案内した。そして詩人にゆっくりと英気を養ってほしいと望んだのである。が、ルクレティウス無花果の実を二つばかり、摘んだに過ぎなかった。健康がすぐれない詩人は、春の靄には耐え難かったのだ。   ***

さて、二人のあいだで交わされた話には、政治に関するものというよりは、寧ろ、哲学上の問題が話題になったのだが、やがて話が進むと、ルクルスは詩人が書いた教訓叙事詩「物の本姓について」に触れ、神々から賜った恩恵について彼の考察を述べた。つまり、彼は宗教心や信仰の深さは、単に迷信として片づけてしまうことの危険性を述べたのである。

・すると哲学者でもある詩人ルクレティウスはルクルスの見解に勿論、反論した。  ****       ・ブレヒト散文集より

 Aus; B. Brecht: Die Trophaen des Lukullus.

     Suhrkamp Vlg.   S.304....  Geschichten in:  Prosa Band Ⅰ