HERR*SOMMER-夏目

現代ドイツ作家・詩人の紹介を主に・・・

*或る消えた哲学者・・ 人生の目的と幸福

 

19世紀、ドイツの哲学者ハルトマンは、今では文献にすら見られないが、当時は知られた哲学者であった。そのハルトマンについて、鴎外は「妄想」のなかで、こんなことを 紹介している。

曰く、「幸福を人生の目的だとすることの不可能なのを証明するために、ハルトマンは錯綜と混迷の三期を立て、次のように云った。第一期では、人は現世で幸福を得ようと思う。それは若さであり、健康、友諠、恋愛といったものであるが、このように数えて、いちいち、その錯綜と混迷を打ち破っているのである。たとえば、恋なぞは主に、苦であるという。

 第二期では、福を死後に求めるのだが、それは個人としての不滅を前提にしなければならない。ところが、個人は死と共に滅する。

次に、第三期では、福を未来に求めるのだが、これは世界の進化発展を前提とする。ところが、世界はどんなに発展進化しても、老病困厄は絶えない。とはつまり、苦は進化と共に長じるということになる。だとすれば、どう対処すべきなのか。    

 *そこでハルトマンが言うには、人間は生を肯定して、おのれを世界の進化発展の過程に委ねて、甘んじて苦を受け入れ、世界の救済を待つがいい、というのである。