HERR*SOMMER-夏目

現代ドイツ作家・詩人の紹介を主に・・・

*シラーの情熱と苦悩・

 23歳の時、短編小説集「小フリーデマン氏」を上梓し作家生活に入ったT.トーマス・マンは、26歳の時に、自身の一族の三代にわたる歴史をえがき名声を得、そして後に、これによってノーベル賞受賞をした初めての長編小説「ブデンブローク家の人々」を発表したのであるが、彼の短編小説のひとつに、シラーの若き日の苦悩と芸術的情熱を、同時代に生きたゲーテに比して描いた「悩みのひととき」がある。***  

「いったい、あの男のほうが偉大なのであろうか。とすれば、どういう点で。 何故?......あの男はおそらく、神と言っていいのであろう。が、英雄ではない。器用な手さばきで、聡明に認識と創造とを切り離して、湧きいずる泉のごとく多産な男。」

「嗚呼。神のごとき口と手で朗らかに作品を生み出していくあの男のごとき澄みきった世界に入っていければなあ。」   

「だが、自分はあの男とは異なる。。自分は無から創造するからだ。。自分は自己の魂の中から生まれてくるものを、音楽として、純粋な原像として描く。歴史、哲学、情熱という手段を借りて。   

艱難への意志。鍛錬と克己。内的芸術への韻律的な衝動。そこから始まって思想へ、心象へ、言語へと至る道程。そこには何という力闘が、苦悩があることか。   

「神のごとき口と手で朗らかに作品を産出するあの男の澄んだ世界に入っていけたらなあ。だが、自分は自分の道と方法で働くのだ。形作って成就するのだ。すくなくとも、充溢し、自己を高め、光明へとのぼっていくのだ。 ***

かくして、シラーの苦心は様々な芸術作品として成就していったことは周知の事実なのである。                     ***

 zB./「群盗」「ドン・カルロス」「たくらみと恋」ヴァレンシュタイン三部作」「オルレアンの乙女」ヴィルヘルム・テル」usw..など。・バラードでは「イビクスの鶴」など

 *因みに、ゲーテが1749年生まれなのに対して、シラーは10年後の1759年、物故したのがゲーテ1832年享年82歳に対して、シラーは1805年で27年も早く、享年44歳の若さであったが、作品の数々は我が国でもよく知られている。