HERR*SOMMER-夏目

現代ドイツ作家・詩人の紹介を主に・・・

*一条の星の光が、煌めいていた: W.ラーベ抄 ③

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・さて、これまでに書いてきた作品に、わたしの生涯のすべてを投入してきたのだが、そのため、書くためにすべてを犠牲にしてきた、といえなくもない。だから、一市民としての生活は、一種の擬態のようなものであったろう。つまり、老いたあのブロテウス(*変幻自在な姿と預言の力をもつ海の神)が好んだように、俗物根性を備えた人間の仮面を、或る時はつけ、その常連を装いつつ市民生活をユーモアを込めて描いてきたのだ。

  生まれ育った地は、北ドイツはヴェーザーガウのオストファーレンというところで、作品にはよくでてくるが、例えば、zB.「オートフェルト」⑦や、「ヘクスターとコールベェイ」⑧、ヴォルフェンビュッテルやハルツ、ブロッケンなどであるが、これらを題名や背景としてよく使ったものなのだ。また、子供のころをエッシャウズハウゼンやブラウンシュヴァイク公国の小都市で過ごしてきたのだが、そのため、脳裡にはそこでの家々や横丁、山々や森の有様などが今でも、彷彿として浮かんできて、実に、子供のころの生活や世界が、かけがえのない宝となっている。とはいえ、当時、父はといえば厳しくしつけられたのを想いだすのだが、父からは一つの目標に向かい、邁進するように精神に植え付けられたものだった。だが、この父も、裁判所の書記官だったが、早くに亡くなっており、わたしが14歳の時のことで、すると、これを機に家族はヴォルフェンビュッテルへ越していたのだ。だが、そこでの暮らしは、これまでにない窮乏生活を強いられていた。母はすると、叔父や叔母に援助の手を求め、学資の工面を依頼してくれたのだが、叔父たちは、(一人は学校長を務め、もう1人はギムナジウムのドイツ語の教師だったが、)甥の私をあまり歓迎してくれなかった。その為、少年期の辛く苦しい想いは、ひとつの傷でもあった。だが、17歳になると、高校を中退して、マークデブルクに行き、そこで書店見習いとして働き始めたのだった。(因みに、先のヘッセ氏も若き頃に書店見習いをしていた時期があったと記憶している…)が、幸いにこの時期に、見習いは4年間続いたのだが、歴史への関心が沸き上がってくると、貪(むさぼ)るように、書物という書物を読み漁(あさ)ったものなのだ。⑨ また、まったくの独学ではあったが、世界の文学についての知識を培(つちか)ったのもこの時期だった。これが処女作を書く際に、どれほど役立ったかと思うと、ひどく懐かしく想いだされてきてならない。 とはいえ、この仕事は長続きはしなく、新たな挫折者として、好きにはなれないにも拘らず、ヴォルフェンビュッテルにまた、戻らねばならなかった。そして、ふたたび、独学で学びなおし、高校のアビトゥーア(*卒業試験)を受けようとしたのだが、これもよい思い出とはなってはおらんのだよ。そこで、竟(つい)に大都会のベルリーンに行くことに決め、大学の聴講生となり、哲学や文学の講義を聴き、広く教養を身につけたく思ったのだが、これも思えば、やはり、職業に挫折した経験のあるスイスの偉大なる作家、ゴットフリート・ケラー⑩氏のとった道でもあったのだよ。                                          

わたしはこのベルリーンには、50年の半ばごろの2年間を過ごしたのだが、この時期に、先の処女作「雀横丁年代記」Die Chronik der Sperlingsgasse の筆をとりはじめていたのだ。   

  (注)-: 

 ビーダーマイアー(Biedermeier) : この時代には、却って、孤独や平安を愛し、 身辺 の細やかな、平凡で日常的なものを好み、写実的に書き続けた作家たちがいた。例えば、シュティフター(A.Stifter,1805- 68), メーリケ, E. Morike,1804- 75 ,     など。

⑦・「オートフェルト」Das Odfeld , Erzahlung.  1888. 

     59歳の作。

⑧「ヘクスターとコールヴェイ」Hoxter und   Corvey. 1875.          44歳の作。

⑨例えば、この時期、次のような文学にラーベは接していた。:   キケロ、Cicero, ハルトマン・フォン・アウエ、H. von Aue,:Der arme Heinrich,サッカレー、Thackeray; 「虚栄の市」Vanity Fair,ホーマー、Homer,:「イーリアス」Ilias,「オデッセイ」Odyssee, シェイクスピア Shakespeare:「ハムレット」Hamlet,usw  カルデロン、Calderon:「人生は夢」Das Leben ein Traum, ゲーテ,Goethe:「ファウスト」Faust, 「エグモント」Egmont, ウーラント、Uhland,  

ディケンズ、Ch.Dickens;    シラー,Schiller: 「群盗」Die Rauber,「たくらみと恋」Kabale und Liebe,「オルレアンの乙女」Jungfrau von Orleans, ジャン・パウルJean Paul; 「貧乏な弁護士ズィーベンケース」 Armen-Advokat Siebenkas,

ゴットヘルフ、Gotthelf ;「召使いのウリー」Uli,der Knecht,

ダンテ、Dante;「新生」Neues Leben, レッシング、Lessing;「エミリア・ガロッティ」Emilia Galotti,  タキトゥス、Tacitus; 「年代記」Annalen,  聖書、(zB.ルカ伝Luke 11.-14, 10-34.

詩篇,Psalm, 137-2,   137-5, ) usw など

⑩・G.ケラー :G. Keller.1819-  90..  父親を5歳で亡くしていた彼は、15歳の夏に或る事件によって放校処分を受けると、以後、絵を描き、文学書を読みながら徒食の生活を送ったが、21歳の時、ミュンヘンに遊学し絵画を学んだ。だが、学資に窮すると、23歳のとき故郷に帰ったものの、ふたたび、徒食の生活をするが、29歳にチューリッヒ州政府の奨学金を得て、ハイデルベルクに留学した。彼の作品には、長編「緑のハインリッヒ」や、短編集では「ゼルトヴィラの人々」などがある。Der grune Heinrich,   Die Leute von eldwyla,.usw