HERR*SOMMER-夏目

現代ドイツ作家・詩人の紹介を主に・・・

*現代ドイツの作家 メッケルの 「ライオン」を読む

 

 嘗て、「現代作家論」シリーズとして文学界に紹介された清水良典氏の「川上弘美覚書」には、フツウの≪私≫の行くえが掲載されていて興味を覚えたのを思いだすのだが、そこには、こんな風なことがかかれていた。

曰く、: 『神さま』の冒頭は、"熊に誘われて散歩に出る。川原に行くのである。 熊はおすの成熟したクマで、だからとても大きく、三つ隣の305号室に、つい最近、越してきた。というものだが、ここに描かれた氏の云う「確かに、起こり得ない非日常的な出逢いが生じ、両者の関係が始まった。しかし、それは決して、日常の基本線をはみ出すことはないは、小生が翻訳したことのあるクリストフ・メッケルの掌編「ライオン」とよく似ていて、この作品をどう解釈したものか、図らずも教えられたからである

      氏は更に、こうも言う。:そこには「スリルがあるわけでもなく、意味深長な言葉や風刺が散りばめられているわけでもない。・・そして、なにも起こらないことが必要なのだ、」と。つまり、この物語から敢えて、メッセージを取り出すなら、殆んど、これがただの"物語"であることだけが伝えられている、とでもいうよりないのだ。ファンタジーを豊かに讃えていながらヒロイックな幻想に染まることなく、謂わば、決して盲目になることなく、フツウのまま物語りきること。それがどんなに稀な資質かと

いうことは、まさに、メッケルの作品「ライオン」をも言い当てて納得

させられるのである。 

 *メッケルは1956年に21歳でデヴューして以来、ドイツで知られている

グラフィカー兼、作家であり、またユニークな詩人でもある。