HERR*SOMMER-夏目

現代ドイツ作家・詩人の紹介を主に・・・

*異国の詩人、ハーフィス : 「西東詩集」 より ②

 

  さて、「西東詩集」の理解には次の三つの視点からみてみるといい。

その①はゲーテが遠い場所、東洋に目を向けたのは何故か、そして異国の詩人ハーフィス(1320-1389)に模範を執ったのは何故かということ。 

 その➁はいくつかの書からなるこの詩集の内実とその区分からの理解。そして、

 その③は詩的様式とその主要な特徴の解明である。そして、この三つのどの視点から理解を試みようとするにしても、留意していなければならないのは次の点である。すなわち、「西東詩集」はゲーテ晩年の作だということ、また、東洋主義の立場に立った作だということである。そして、そこから一切の詩篇に共通している体験内実とそこに表示された意識との間の<距離>といったものや、教訓的、比喩的、更には、寓意的な表現形式が何故、執りいれられたかが理解されるであろう。

 順序は前後するが、まず第二の立場として挙げた<内実とその区分>から、見ていくことにしよう。

  すでに述べたように、この詩集は幾つかの書からなっているのだが、そこには二つの中心があり、そして、この二つの書は全作品の担い手でもある。

 一つは詩人、賢者の形姿としてのハーフィス、すなわち、「ハーフィスの書」であり、もう一つは、晩年の恋人の形姿としてのズライカ、すなわち、「ズライカの書」である。ゲーテ私・イッヒichの比喩としてハーフィスを、そして汝・きみDuの比喩としてズライカを歌うのである。こうして出来上がったのが、「ハーフィスの書」であり、「ズライカの書」であるのだが、これはもとより、抒情的告白として歌われた抒情的な世界であることは言うまでもない。