HERR*SOMMER-夏目

現代ドイツ作家・詩人の紹介を主に・・・

*「ヘジラ」 「西東詩集」ゲーテ ③

 

「西東詩集」はゲーテ晩年になった作だが、東洋はまさに族長的な世界の地であった。そして、それは瞑想的な老年ゲーテの気分に適合した。そのような現実性から隔たった避難所としての東洋にゲーテは親縁性を見たのであった。

巻頭の詩、ヘジラHegire(移住)は老年ゲーテの遠方への魅力と逃亡から生まれたといって差し支えない。***

   北も 西も 南も砕け  王座は裂け 国々は 震える 

 移り住もう 清らかな 東方で 族長の国の 

           大気を 味わおう

 愛と酒と 詩にひたって キーゼルの泉で 若返ろう

 その純朴 正義の地で わたしは 人類の 原始の深みに

 分け入ろう そこは人々が まだ 神から 天の教えを

 地の言葉で 享(う)け 憶測して 悩むことなかったところ

 民は 父祖を崇(あが)め 敬(うやま)ひ 異郷の勤めを

 すべて 拒んだところ 認識は狭くとも 信念は厚く

 若さの境地を 愉しむところ そこで 重んじられた言葉は

 口から 口へ 口から 耳への 伝承的な 一語一語 !!.. 

*「西東詩集」は12の書からなり、約250篇からの全作品に一つの統一がなされているのだが、それはなにかというと、謂わば、ゲーテ晩年の気分の統一といったもので、それを言ひ換えるならば、考えうる最も拘束のない統一、即ち、あの「清らかな東方の、族長の国の空気の統一と、それへの憧憬であったといってよい。 

  Nord und West und Sud zersplittern,

Throne bersten, Reiche zittern,

Fluchte du , im reinen Osten 

Patriarchen-Luft zu kosten,

Unter Lieben ,Trinken, Singen,

soll dich Chisters Quell verjungen.

Dort , im Reinen und im Rechten,

Will ich menschlichen Geschlechten

In des Ursprungs Tiefe dringen,

wo sich noch von Gott empfingen

Himmels-lehr'  in Erdesprachen,

Und sich nicht den Kopf zerbrachen.

      *** Aus: Hegire :  Buch des Sangers (Moganni Nameh)