HERR*SOMMER-夏目

現代ドイツ作家・詩人の紹介を主に・・・

*老子と「道徳経」 承前  ブレヒト散文詩 から

肩越しに 老賢者は 男に目を向けた

男は 破れた衣を つづって着 履物は

履いているでもなく 額には 太い皺が 走り

みるからに 勝利の女神とは 無縁のる様子だった 

それなのに 見上げたものだ-- 老賢者は つぶやくと

声高に云った --求められたからには 応ずることにしよう・・

こうして 老賢者は 牛から降りると 七日間にわたって

少年に 口述筆記をさせた その間 税関番は 

三度の食事を 用意し 質素ながら もてなしていると 

やがて 思いのすべてを 書き終えた そして 少年が

税関番に 81章の 道徳訓からなる 箴言を渡すと

老賢者は 礼を述べ もと来た 大木の黒松を 通り過ぎ

岩山へと 消えて行った ふたりを見送った税関番は 

思わず つぶやいていた --あんなに 礼儀正しいお方も

おられるのだのう・・・かくして 後世に 老賢者から

周知の 知恵と教訓の書 「道徳経」が 伝わり

残されたというのである・・

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