HERR*SOMMER-夏目

現代ドイツ作家・詩人の紹介を主に・・・

* たくらみと恋 Kabale und Liebe

   

貴族で宰相の息子フェルディナントと市民の娘ルイーゼの悲恋を描いて多大の成功を収めた戯曲に「たくらみと恋」があるが、これはゲーテと並び、ドイツ古典主義を代表する詩人であり戯曲家シラーの悲劇作品で、シラーの言葉にこんな一節がある。曰く:  「とりとめのない談話も、偶然といってよい邂逅も、空想豊かな男にかかれば、その情熱によって、明白な証拠となりうるかもしれぬのである。  Ⅱ-13   導入部 

    

こんな疑惑がジュリアンの気持ちを一変させた。考えれば考えるほど、心の中には恋の芽生えがあったのだが、それを封じてしまうのはわけもないことであった。・・恋といってもマチルドの美貌、というよりは寧ろ、女王のような振る舞いと、すばらしい衣装に魅せられたに過ぎないのだ。つまり、こういう点からして、ジュリアンはやはり、成り上がりものにすぎず、田舎者の才人が上流階級の社交界にあらわれると、いちばん驚かされるのは美しい女によってなのであった。

   スタンダール赤と黒」 第二部 第十三章