HERR*SOMMER-夏目

現代ドイツ作家・詩人の紹介を主に・・・

* 懐かしき夢: ハイネ より

 

懐かしき 夢を みた: 

五月の 夜の こと

ぼくたちは 菩提樹の 木蔭(こかげ)で

永久(とわ)の 愛を 誓って いた

それは 新たな 誓い

くすくす 笑ひ 愛撫し 

接吻を 交わし あった

ぼくは 誓いを こころ に留めた

けれども ぼくを 苦しめて いた とは

おお 恋人よ!...

きみの 誓いは 美しく も

 辛辣 だった ね

誓いに 嘘は なかった のに

きみの 辛辣さ は

 超過激 だった とは!.. 

               

H.Heine : Der alte  Traum 

Aus : Dt. Liebesgedichte 

Reclam  ebd.  S. 33f.

  * Heinrich Heine :         

  Mir traumte wieder der alte Traum:

Es war eine Nacht im Mai,

Wir sassen unter dem Linden-Baum,

Und schwuren uns ewige Treue.

Das war ein Schworen und Schworen aufs Neu,

Ein Kichern, ein Kosen, ein Kussen;

Dass ich gedenk des Scwures sei,

Hast du in die Hand mich gebissen. 

 O Liebchen mit den Auglein klar !..

   O Liebchen, schon und bissig !..

   Das Schworen in der Ordnung war,

   Das Beissen war uberflussig .

 

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*西洋の現代文学に関して:

                 

 ・西洋の現代文学に関して:--

世界をラジカルに懐疑し信じられないという立場の代表が、フランスの実存主義の作家、例えばサルトルとカミユならば、ドイツ文学圏のカフカは世界観はこれに近いが、異なるのはいかにしたら打開できるか問うところである。:

前者は、もし頼れるものがあるとすれば、それは一個の自己のみと主張するゆえ、そこには孤独が見え隠れするのだが、カフカには魂の救済願望があり永遠の秩序を問いかける。それゆえ、神からの呼びかけを必死になって捉えようとする。が、上からの声はいまだに届かずじまいなである。。

このことをカフカは長編「城」Das Schlossで麓(ふもと)にまでは辿り着けたものの決して城には入り込めない主人公をして象徴的に描いているのである。

Aus:   W. Grenzmann ,   Dichtung und Glaube

     Probleme und Gestalten der dt. Gegenwarts-

Literatur    S.29ff..

   Athenäum   Vlg.    1967...

W. グレンツマン「文学と信仰」より

 

*アヤックスの盾には絡みつく蛇が:

 

       * 8909- 9126  :

・この箇所はフォルキアスの台詞、「薄曇りの朝、輝きまばゆく真昼の太陽よ!.」以下、第三幕その1の最後までの場面であるが、それまでのヤンブスのトリメーター、短長・抑揚格の3音格詩がトロケーウスの長短・揚抑格のテトゥラメーター、即ち、4 歩格・4詩格からなる詩行にとって代わっている。

 

  因みに、テトラtetra-とは、vier、4を意味し、これも古代ギリシアの悲劇に倣ったものである。

  フォルキアス :

見てのとおり アヤックスの盾には 

絡(から)みつく蛇が描かれ 

テーベを攻めた7人の勇士たちも その盾に

意味深い図柄をつけておった。

夜空に輝く月や星も 女神も 

    英雄もあった。

  ・9035 ~:

梯子(はしご)や剣や松明(たいまつ)や 

威嚇する攻め道具も 様様な図柄になった。

また ゲルマンの勇士たちも 先祖代々 

そうした紋章をつけ、 

獅子や鷲 鳥獣の爪や嘴 

水牛の角も鳥の羽も 

孔雀の尾も薔薇もあった。・・

金銀 青赤の縞模様の図柄も 

大広間に 列をなし掛かっている。

*Ajax fuhrte ja geschlungne Schlang'  im Schilde,

        Wie ihr selbst gesehn. 

 Die Sieben dort vor Theben trugen Bildnerey'n 

Ein jeder auf seinem Schilde ,reich bedeutungsvoll.

Da sah man Mond und Stern'

 Am nachtigen Himmelsraum,

Auch Gottin, Held und Leiter ,Schwerter,

Fackeln auch......

          ***  

*アヤックス  Ajax:  アキレスに次ぐ英雄。

  カサンドラを誘拐した。

・7人の勇士: ティドイス、カバノイス他で、

テーベ Theben古代  ギリシア・ベオティーエンの首都を攻めた

   *****

この韻律学・Metrikに関しては、ハンザー版ゲーテ全集、18-1. Letzte Jahre 1827-1832.のなかのKommentar,Faust Ⅱ・3 Akt・S.922-S.1023.を参照。

Aus ; GOETHE SAMTLICHE WERKE 18-1

   Letzte Jahre 1827-1832  HANSER VERLAG 

      Munchner Ausgabe   S.922-1023. 

 

 

 

 

    

*奇(くす)しき薔薇 :

 


 

 

バラの香りの愛(いと)ほしく 息吹の真っ赤に燃ゑしとき

愛しきバラの香よ ! そは聖母マリアの御慈悲により 

バラは奇しき薔薇となり  されど タンポポの花咲き終わるや 

そが冠毛は風に舞ひ四散して 遠く近くに着きしなり されど 

そが繰り返し繰り返すは 閉ざされたる生成と死か 

されば そが世界から解き放ち賜ふは 聖母マリアのおわします世界 !!...

ここにおいて世界は ロゴスの真理と溶け合ひて導きたまう

さあ モルガーナよ 妖精よ みな一になり 

新しき世界にて戯れ  遊べ !!... 

         ***

E.ランゲッサーの聖なる世界より

 

 

 

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*木の葉が落ちる : シュトルム 

 

 霧がたちこめ 木の葉が落ちる

ワインを注(つ)げよ まろやかなワインを  !...

この憂き日を かがやかしい日にしたいのだ 

外は荒れ狂っているが この世はすばらしい

かくも 神々しきゆゑに!..... 

 けれども ときおり こころは泪に濡れる だが

それに構ふてゐてはいけない 古来から 云われてゐるではないか: 

こころ正しき者は挫(くじ)けないと 


霧がたちこめ木の葉が落ちる 
ワインを注げよ まろやかなワインを!!.

この憂き日を輝かしい日に!!.... 秋深ければ待つがいい・・

いましばし  待つがいいのだ やがて 時が来て春になれば 

天は晴れやかにほほ笑み あたりはスミレで咲き匂ふのだから 

澄みきった碧空(あおぞら)の日には

友よ 日のうつろひゆかぬうちに 楽しもうではないか 

  こころゆくまで 楽しもうではないか!....

   T. Storm :   Oktober-lied

   Aus; T. Storm   Gedichte    Auswahl     Reclam  ebd. S.11 f.

   拙訳 シュトルム詩集より     

  * Oktober-lied :
Der Nebel steigt,  es fallt  das  Laub ;
 Schenk ein  den Wein,  den holden !
Wir wollen uns den grauen Tag
  Vergolden,   ja vergolden ! 
 Und geht es draussen noch so toll,
Unchristlich oder  christlich,
Ist doch die Welt,  die schone  Welt,
 So ganzlich unverwustlich ! **
  Und wimmert auch einmal das Herz,--
Stoss an und lass  es klingen !
Wir wissen's  doch, ein rechtes Herz
Ist gar nicht um-zu-bringen.**
  Der Nebel steigt,  es fallt das Laub ;
 Schenk ein den Wein , den holden !
 Wir wollen uns den grauen Tag
  Vergolden,  ja  vergolden !!
  Wohl ist es Herbst ; doch warte  nur,
 Doch warte nur ein Weilchen !
  Der Fruhling kommt,  der Himmel lacht ,
 Es steht die Welt in Veilchen.
   Die blauen Tage brechen an,
  Und ehe sie verfliessen,
  Wir wollen sie,  mein wackrer Freund,
  Geniessen,  ja  geniessen !
          2007.5.22. 

 

 

 
 
 
 
          

* ケンタウルス族の賢者 ヒロン: 「ファウスト」 第二部 第二幕より

 

ヒロンは半人半馬の怪物であるケンタウルス族の賢者で、野蛮で粗暴な一族の中で例外的な存在である。

   7331 ~: 

ファウストヒロンの対話も脚韻を踏み書かれている。         Dialog  im  Sprech-Vers: 

ヒロン:  何じゃ、何ごとじゃ

ファウスト: 馬をお止めください

ヒロン: いや、とまらぬ

ファウスト: では 一緒にお連れください

ヒロン : それなら乗るがよい そうすれば 

  訊きたいことも聴ける 

 何処へ行く気じゃと  

この川岸に佇んでいたお前を向こう岸に渡してやってもよい

ファウスト;     何処へでも お供します

 終生 御恩は忘れません   あなたは偉大な人 そして

 気高い 教育者ですから 

あなたが 教育された英雄は数限りない

あなたの名声は 隈なく轟いています

アルゴー船に 乗り組んでいた高邁な 勇士たちも

詩に歌われているのです 優れた人もみな 

あなたが お育てになった人たち 

ヒロン :  今さらなにを申す 

メントルの姿で教育を施したパラスでさえ 

名誉は受けてはおらぬ  

結局 弟子たるものは 自分流儀で邁進していくしかないのじゃよ   育てられて傑出した人物になるわけではないのだ

     ~7344

Selbst Pallas kommt als Mentor nicht zu Ehren :

 Am Ende treiben sie's nach ihrer Weise fort

 Als wenn sie nicht erzogen waren....7342-7344..

        

            

 

 

 

 

*早呑み込みで お前たちは・・:

 

2.城の中庭 Innerer Burghof:

9127-- 9573   :

 この場面の冒頭、9127- 91は、やはり、古代ギリシア悲劇の無韻の音韻形式で書かれている。すなわち、ヤンブス・抑揚・短長格のトリメーター・3音格詩である。そして、これは合唱隊、あるいは、合唱隊を指揮する女とヘレナの対話となっている箇所で、それはまた、場面全体も貫いているのである。

  9127~ 34. 合唱を指揮する女:--

早呑み込みで お前たちは まったく間抜け 

  愚かなおなごね!..

.目先のことばかり囚われる 

幸や不幸 風の向きで どうにでもなる 

落ち着きのない

堪え性(こらえしょう)のない

 おなごなのかしら・・

目先のことに囚われ

何かというと喰ってかかる 

すると 寄ってたかって仲間を

皆で叩くのだわ やれ 嬉しいの やれ

悲しいのと大声で 笑ったり泣いたり

そんなときだけ不思議と調子があうのね 

もうお黙り お妃さまが気高き心で 

どうお決めになるか待つのです・・

Vorschnell und tharicht ,acht wahrhaftes Weibsgebild !

  Vom Augenblick abhangig, Spiel der Witterung,

 Des Glucks und Unglucks, keins von beiden

   Wisst ihr je stets..  

 

* ヴォルフの「何処にも居場所はない」:

 

*Christa Wolf;クリスタ・ヴォルフ:「どこにも居場所はない」短編 79.  

   ともにみずから命を絶った短編の名手で簡潔な文体で描くクライスト1777-1811,とカロリーネ・ギュンデローデ1780-1806,との、( 因みに、前者は34歳、後者は26歳で夭折している)1804年における 架空の邂逅が描かれたが、ミヒャエルはこの叙情的な対話と思考を、不安と動揺として解釈することに躊躇はなく、却って、云うのである。:この書物の中で叫ばれていることは誰も聞き漏らさないであろう。つまり、ヴォルフの声が彼女の棲む国では寂し気に感じられるのだが、それは嘗てのカロリーネ・フォン・ギュンデローデやクライストが感じていたのと似たもので、つまり、ここではヴォルフと東独は互いに、行き違いが生じるばかりで、それは、一女流詩人と一国家との、ポエズィーとファンタジーの擁護者と、浸炭硬化した権力者との行き違いと相似たものとして捉え、作者みずからの苦しい立場を暗示しているのである。

 

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     ++

      なお、ギュンデローデはドイツの女流詩人でロマン派の詩人ブレンターノとその妻ベッティーナの友人でもあり、彼女は死を渇望するような陰鬱な一連の詩を美しくも残している。

  また、浪漫的ギリシア最大の女流詩人サッポー(前612年頃~ ?) はこう嘆息して云うのである。:ええ、おそらく、理解はできますわね。私たちは束縛され従属から免れ得ないとしても、思考や想像の中では、そこから離れ抜け出ようとしているのですものね。けれども、現実は決して、許されず叶うことではありませんのよ。・・

 

 

* さっと 立ち去ることだな: 「ファウスト」真夜中

 

Faust:       Entferne dich :

さっさと 立ち去ることだな 用はない:   

Die Sorge:  Ich bin am rechten Ort

 いいえ 居させてもらうわ  

ファウスト: 始めは 怒りが込み上げてきたが、やがて、 気を静めて:

ならば 呪文は 口にせぬことだ

憂い:    わたしの声は 耳からではないわ 直に こころに 響くのよ これまで 姿を代えては 怖らせてきたものよ    不安が  いつも 付き纏っているものだから 捜してくれる者好きは いないけれど 見つかるのも 簡単ね まして 呪われたりもするけど 世辞も云われたり でも あなたには憂いなど 無縁とでも 云いたいのかしら  ~11432

 Stets gefunden ,nie gesucht

  So geschmeichelt  ,wie verflucht.

Hast du Die Sorge nie gekannt ?.......

 

 

 

 

* この不届きな 邪魔者めが・・: 

 

            9435~ 41行:   Faust;

  このファウストの台詞は古代ギリシアのトリメーター、即ち、3音格詩で書かれている。: 

     この不届きな 邪魔者めが 

かましくも 押し寄せてきたか  

こんな非常なときに 無意味な騒ぎは 許されまいぞ  

美しい使者とて 悪い便りをもたらすは  醜いもの 

なのに おまえときたら なんという醜女か

いつだって 悪い便りばかり 携えてくる 

だが 今日は 気の毒だった 

骨折り損の草臥れ儲け というものだ

Verwegne Störung !.. wider-wärtig dringt sie ein,

 Auch nicht in Gefahren mag ich sinnlos Ungestüm,

  Den schönsten Boten Ungücks-Botschaft haßlich ihn,.

    *Aus; Goethe Samtliche Werke 18-1,

         Letzte Jahre 1827- 32        

  Hanser  Munchner  Ausgabe 1997.

 Kommentar  Faust Ⅱ-3.Akt.  Metrik  S. 945ff.....