HERR*SOMMER-夏目

現代ドイツ作家・詩人の紹介を主に・・・

E. ランゲッサー詩と 短編選

*ウクライナの女 リーディア: 

「ねえ、あのヒラメのこと、まだ覚えていらして?..」と訊ねてみたが、いいえとロベルタは云うのだった。 「でも、忘れるはずないわ。大きなヒラメ焼いたでしょう?..」こう云ったにも拘らず、ロベルタは覚えていないの、と繰り返す。けれども、それは終戦直前…

*ブナの森?..ダッハウ?..それとも、:

「それにしても、あそこの老紳士は何を話しているのだろう。・・誰かが処刑されたとか、三度の鞭で首が飛んだとか・・」 ベルリンを貫流しているシュプレー川にあるトンネルは、占領された折り、一部の狂信者により、2,3週間ほど前、水浸しにされてしまった…

*カッコウと負傷帰還兵: 

カッコウが啼いている。その啼き声は、辺りに響きわたり木霊している。すると、その啼き声に目ざめた夫は、かれは負傷帰還兵であったが、手足や体を思いきりの伸ばすと、心地よさそうに呻き声をあげた。そして傍らの妻の手をつかもうとした。だが、妻はその…

* 御復活祭前の第五旬節の日曜日: 

Sonntag Quinqua-gesima 人は 同朋(はらから) ともに生き 傷(いた)みも 情熱も ともに 分かちあひ さながら 灼熱の 地獄のなかで 泪を流すは 熱く たゆまず こころを ひとつにしようと 願ひしからか 噫 されど 悲しきかな!.. 目の前は 闇のように 壁に閉ざさ…

* 御復活前の第六旬節の主日 : ランゲッサー

いまだ神はお隠れになり 野の木陰で ヤハヴェの呼ぶ声をまえに 民は呻吟していた 民は疎(うと)まれ イバラの道を 通り抜けゆく おお 神よ 仔羊なる民は 主の下にてつき従うもの 穏やかな足どりで 身を屈(かが)めひとつになり ともに世と交わり手に手を携え …

*御復活前の七旬節の日曜日:  ランゲッサー

人類は ふかきこころを 抱いて 待ち望む すべての 石からさえ 血のにじむ 孤独のふちの 悲しみから そが 肉体は 樹木や 動物にも 朋友とならんことを 望み 溢るる愁ひの 呪縛から みずからを 解き放つ 噫 愁ひに満ちた 苦悩よ !.. 清水や 棕櫚の樹や 繁みに…