HERR*SOMMER-夏目

現代ドイツ作家・詩人の紹介を主に・・・

Andere Romantik:詩選

*「トリスタンとイゾルデ」: プラーテン 

ペルシアのガゼル詩の形式美を駆使し、ドイツ詩に新たな地平を切り開いたプラーテンのロマンティックな詩から。 --因みに、プラーテンは晩年のゲーテと多少の親交のあった形式美に優れた詩人。** 美の魅惑に憑りつかれし者は 遁れる 術(すべ)もなく やがて …

*たくらみと恋 : Kabale und Liebe

貴族で宰相の息子フェルディナントと市民の娘ルイーゼの悲恋を描いて成功を収めた戯曲に「たくらみと恋」があるが、これはゲーテと並び、ドイツ古典主義を代表する戯曲家シラーの悲劇作品で、シラーの言葉にこんな一節がある。: 「とりとめのない談話も、偶…

*「砂時計 」: ハイネ  

砂時計の砂が わずかづつ 落ちていく 妻よ 愛しいひとよ 死が わたしを引き裂いていく 妻よ 死がお前の腕から わたしを引き裂いていく 抵抗しても徒労に帰すだろう 死は 魂まで引き裂いていく わが魂は恐怖で死にたい思いだ 死は棲み慣れた家から魂を追い出…

*奇(くす)しき薔薇 :

バラの香りの愛(いと)ほしく 息吹の真っ赤に燃ゑしとき 愛しきバラの香よ ! そは聖母マリアの御慈悲により バラは奇しき薔薇となり・・ されど タンポポの 花咲き終わるや そが冠毛は風に舞ひ 四散して 遠く近くに着きしなり されど そが繰り返し繰り返すは …

*棲家は小さくとも、安らぎは大きい : パルヴァ・ドームス、マグナム・クイエス

W.ベルゲングリューン短篇「古都奇譚」 冒頭部 より: さあ、みなさま、わたしの傍らにおかけください。ボトルはテーブルに用意できております。秋の陽はすでに沈み夕暮れて、外では鴉が鳴きさけび木枯らしも吹き荒(すさ)んでおります。 ところで、地下に眠る…

* ディオティーマよ!...何処に?・: ヘルダーリン「ヒューペリオン」より

1770年生まれのヘルダーリンはシラーとの交友もあったドイツの純粋な魂の詩人で、73年の全生涯の後半生、30数年を精神の闇に暮らした悲痛な詩人でもあった。彼の評価は高く、 彼の唯一完成した散文作品に手紙形式で書かれた「ヒューペリオン」がある。その中…

*木の葉が落ちる : シュトルム 

霧がたちこめ 木の葉が落ちる ワインを注(つ)げよ まろやかなワインを !... この憂き日を かがやかしい日にしたいのだ 外は荒れ狂っているが この世はすばらしい かくも 神々しきゆゑに!..... けれども ときおり こころは泪に濡れる だが それに構ふてゐては…

* 魂の祈り :ダンテ「神曲」 より

ダンテの「神曲」は周知のように、地獄篇・浄罪篇・天堂篇の三部構成からなっている。その浄罪篇の第十一歌では、ほぼ主の祈りに似て傲慢の罪を償うべく魂の祈りが綴られている。: ・・天にまします われらの父よ 願わくば聖名(みな)と 聖能(みちから)の尊ま…

* 鐘の音 :デーメル「女と世界」より

そして 日暮れ 一息したく 鐘の音に 耳を澄ます あちこちの小屋から立ち上る煙 こずえは温かく包み込まれ さあ 閉じこもっていないで 外に出ておいで 蕾に蔽われた木の下では 木霊と そよぎが囁いている: 春だ さあ出ておいで 父と子が毬投げして遊ぶ草原に …

*魅せられしもの : ホフマンスヴァルダウ

魂を歓びで 駆り立てしものよ! そは 天国なるワインよりも甘く 汝れより注(つ)がれしをのぞみ 富める宝物より好ましきものよ! そにより こころ強くもなり はたまた 感情の 傷つきしことありしも そは薔薇の輝きよりも こころ満たされ どんなルビーとも比(く…

*「若い二人」Die Beiden: ホフマンスタール

「美しき惑ひの年」;Das Jahr der schonen Tauschungen はカロッサ;Carossaの医師を目指して学ぶ学生時代を扱った短篇で、こんな詩も挿入されて親しみある詩である。 「詩だよ!.. まだ印刷されてない。 詩人の自筆だよ」 フーゴーは手にもった封書を激しく振…

*愛と惜別 : ザラー・キルシュ 

もう 行ってもいいのよ: 乙女は月に云う 大きな馬車に積み込まれた月 白い歯を見せ頷うなづくと 転がるように 月は立ち去っていた 扉の引手を 押さえつけないで: 乙女は風に云う 煤すすと雨まじりの風が 大粒の霰あられで みずからをも鞭打っている もう 行…

*「人間の哀感」と徒然草・第七段  :

「あだし野の露」で始まる徒然草・第七段にみえる 深い人生観。 これと似て、ドイツの最も傑出したバロック詩人グリューフィウスにもこんな詩がある。 人間の哀感 Menschliches Elende : 嗚呼 人間: それは 何?... かなしみの 棲家?... 偽善に満ちた幸福の塊…

* 涼しき夜: ハイネ

死よ そが涼しき夜の帷(とばり)なら 生は蒸し暑き昼間 はや 黄昏て眠きかな 昼間 勤(いそ)しみ 疲れしゆゑに 噫 わが奥津城(おくつき)に 一本の木の伸び出できて 一羽の夜啼き鶯の囀(さえず)らん 唄ふは愛の歌にして 夢の中にて聞くは その歌ばかり H.Heine …

*比喩としての銀杏の葉:「西東詩集」より

83年という長い星霜の大半を休むことなく精力的に活動しつづけたゲーテ。そのゲーテの晩年(65歳)の詩に、銀杏をうたった一篇がある。 約250篇からなる「西東詩集」West-ostlicher Divan のなかの一篇で、こんな詩である。 東方の国からはるばる 移植された銀…

*第二の青春 マリアンネ:「西東詩集」より

ゲーテ晩年になった「西東詩集」の萌芽として、新たな恋愛対象として出逢ったマリアンネ・フォン・ヴィレマーがいる。このマリアンネはズライカとして「西東詩集」に重要な形姿として現われてくる。つまり、そこには最後の恋愛体験としてのマリアンネ体験に…