HERR*SOMMER-夏目

現代ドイツ作家・詩人の紹介を主に・・・

*行けよ、ミサは終われり:G.グラース「ブリキの太鼓」より

 

三人の少年は祈禱から始めた。

 赤と白のミサの衣を着たレンヴァントの兄は香炉を持ち、弟は祭鈴を持っていた。代理司祭のいでたちをしたコーレンクラウがミサに必要な品を全部持ってきた。司祭の衣はだぶだふだったが、なかなか巧く真似ていた。最初は皮肉たっぷりにやり始めたのだったが、そのうち聖書の文句と儀式にすっかり酔ってくると、本式のミサを施行していた。といっても、黒ミサには違いなかったのだが。・・:

   まず膝まづいて十字を切り、間違えることなくミサを歌い始めた。入祭文の次には、主よ憐れみたまえ、そして、いと高き天にて神に栄光あれ、とつづき、集禱文ハレルヤの詩句、それからクレド・信経奉献ではパンを捧げ葡萄酒と水を混ぜ、聖盃・カリスを香で燻し、兄弟たちよ祈れ・オラーテ・フラトレスとつづき、更には、オレームス・祈りましょうと唱えた。この間僕はブリキの太鼓を強く弱く、短く長く巧みに叩いては伴奏を怠らなかった。それから、天にましますの祈りとなり聖体拝受から一同が聖餐を味わっている間、ぼくのブリキの太鼓がなおも響き渡り、コンフィティオル・われ告白と唱えるのだった。・・こうしてミサは滞りなく進行した。

  代理司祭の声は高まり、また低くなりして実に素晴らしく、彼は祝福の言葉を述べた。そして竟に、結びの言葉、「行けよ、ミサは終わった」イテ・ミサ・エスを洩らすと、精神の釈放が沸きあがってきた。信仰を固め、オスカルとイエスの名において彼らに世俗の逮捕が振りかかったのである。だが、ぼくの耳にはミサの間から自動車の音と長靴の踵が教会のタイルを鳴らす騒々しい物音が聞こえていたので、別段、驚くことはなかった。

 ***G.グラース「ブリキの太鼓」Ⅱ より