HERR*SOMMER-夏目

現代ドイツ作家・詩人の紹介を主に・・・

*ジョン・バース「酔いどれ草の仲買人」より

      詩の末尾に桂冠詩人エベニーザーと書き添えた二行連句詩篇は、航跡に船を追う海豚の群れを眺めては、ミルトンの著作を参考にしながら眼にするメリーランドのおもかげを描いたものである。:

 

 トロイアを撃ち破り、帰路のユリシーズ:  

 纏(まと)いし衣は破れ 西の方へと彷徨い

白波の立つ海を  十年に渡り放浪し

 竟(つい)に 辿り着くは イサカ

身に沁みた苦難も去り 天国にも似て 岸辺も 岩も 

蕭条たる磯にも 妙に魅せられし 

 嗚呼 この国の美しさよ  

砂浜も 木立も  心地良き港 ここにて 疲れ果てし水夫は 癒され

 詩人の歌に 妙なる言葉の重なりぬ

 さても メリーランドの魅惑を 語りつくさんぞ !..

 

 海原に起こる難を逃れ  恙(つつが)なく 辿りつきし歓びよ

  船人が 高き帆柱に攀(よ)じ登り

 目のあたりに見る 郷(さと)の美しさよ !...

 

   John Barth : The sot-weed Factor