詩の末尾に 桂冠詩人 エベニーザと書いた二行連句の詩篇は、船を追う海豚の群れを眺め、ミルトンを参考にしながらメリーランドのおもかげを描く:-
おお トロイを撃ち破り、帰路につきしユリシーズよ: -
纏(まと)う衣は破れしも 西へと白波立つ海を 十年の歳月を彷徨いて
竟(つい)に辿り着くはイサカ あまたの苦難を乗り越え
岸辺も 岩も 磯も 今に魅せられ 天国かと ・・
おお この国の美しさ!.. 砂浜に木立に 港にも水夫は癒されん
詩人の歌には妙なる言葉・・いかにメリーランドの魅惑を語らんか!..
海原の難も逃れ 恙(つつが)なく辿りつき 船人が高く帆柱に攀(よ)じ登れば
嗚呼 目のあたりに見る郷(さと)の美しさ!...
John Barth : The sot-weed Factor ジョーン・バースより
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*ホメロスの叙事詩「オデュッセイア」の主人公はオデュッセウス。ラテン語ではユリシーズだが、これはトロイ戦争から帰途の冒険譚で彼は数々の試練を乗り越え、知恵と勇気で故郷のイサカに帰りつく。
そして この途上に体験したエピソードにはあまたあれど、そのひとつは美声で船乗りを誘惑するセイレンとの遭遇があり、下手すれば船は難破か。だが、オデュッセウスはそれを逃れんため船員には耳栓を、みずからは船のマストに縛り付けさせ、歌声の誘惑に負けず航海で来た。