HERR*SOMMER-夏目

現代ドイツ作家・詩人の紹介を主に・+つれづれドイツ語--

*トロイを打ち破りて帰路のユリシーズ: -Odysseus

      詩の末尾に 桂冠詩人 エベニーザと書いた二行連句の詩篇は、船を追う海豚の群れを眺め、ミルトンを参考にしながらメリーランドのおもかげを描く:-

 おお トロイを撃ち破り、帰路につきしユリシーズよ: -

    纏(まと)う衣は破れしも 西へと白波立つ海を 十年の歳月を彷徨いて   

  竟(つい)に辿り着くはイサカ あまたの苦難を乗り越え 

 岸辺も 岩も 磯も 今に魅せられ 天国かと ・・

 おお この国の美しさ!.. 砂浜に木立に 港にも水夫は癒されん    

 詩人の歌には妙なる言葉・・いかにメリーランドの魅惑を語らんか!..

 海原の難も逃れ  恙(つつが)なく辿りつき 船人が高く帆柱に攀(よ)じ登れば

 嗚呼 目のあたりに見る郷(さと)の美しさ!...

   John Barth : The sot-weed Factor ジョーン・バースより

  +++

*ホメロスの叙事詩「オデュッセイア」の主人公はオデュッセウス。ラテン語ではユリシーズだが、これはトロイ戦争から帰途の冒険譚で彼は数々の試練を乗り越え、知恵と勇気で故郷のイサカに帰りつく。

そして この途上に体験したエピソードにはあまたあれど、そのひとつは美声で船乗りを誘惑するセイレンとの遭遇があり、下手すれば船は難破か。だが、オデュッセウスはそれを逃れんため船員には耳栓を、みずからは船のマストに縛り付けさせ、歌声の誘惑に負けず航海で来た。