HERR*SOMMER-夏目

現代ドイツ作家・詩人の紹介を主に・・・

2016-01-01から1年間の記事一覧

*お二人は 次第に 身を寄せ合い・・:

前回はヘレナとファウストの愛の告白の場面だったが、それを讃える合唱部,Chor:9385-9410行は、トリアーデ、即ち、1.シュトローフェ2.アンチシュトローフェ、そして3.エピシュトローフェの構成で書かれている。 ・9401~: お二人は 次第に 身を 寄せあ…

* ねえ どうすれば あのように 美しく :愛の告白

*9377- 84行 :Helena und Faust この箇所はヘレナとファウストとの愛の告白の場面で、毬を互いに投げあい受け取るように、言葉と意味を交わしながら、二人の心がやさしく結ばれてゆく。韻はヤンブスの5脚で、無韻のブランクフェルス、そして脚韻はパールライ…

*みずから引き起こした罪を この手で・・:

9246~ 72 :Helena : このヘレナとファウストの対話の場面は、9192以下、そして、9333-45のFaustの台詞や、9356-76のヘレナとファウストの対話の場面と同様、それまでのトリメーターに代わって、近代的なブランクフェルス、抑揚・短長格の5脚無韻詩で書かれ…

* 遠くで 白鳥の啼くのが・・:「ファウスト」第二部 「ヘレナ」 より 

*9078- 9121 行 :合唱 より この箇所も前の合唱部と同じ構成から成り立っている。即ち、1.フォア・シュトローフェと2.シュトローフェ、3.アンチ・シュトローフェ、そして4.エピ・シュトローフェである。 9099行 ~: 3の箇所 から :-- けれど おや …

*お黙り お黙り 嫌らしい目つきで・・:  

8882- 9808 行 :合唱部 この箇所は4節よりなり、1.Vor-Strophe 5行と、2.シュトローフェ8行、3.アンチ・シュトローフェ8行、4.Epi-Strophe の6行からなる三和音である。(*因みに、4.のエピ・オーデ Epi-Odeとは、ギリシア劇における末段のこと…

*イリオスの城壁は まだ残って・・:「ファウスト」第二部 より 

・スパルタのメネラス王の 宮殿の前 Vor dem Pallaste des Menelas zu Sparta *8697- 8753 行 : ・この合唱部の箇所は、9節からなっていて、1と2はそれぞれ5行づつ、3と4はそれぞれ6行づつ、そして5節目はメソーデといって、中間節となっており、ま…

*悲しい 囚われの女たちよ: 

*第二部 第三幕 ヘレナ より : ・ 次の合唱部の歌は、全体がトロケーウス (抑揚・長短格)のリズムで書かれている。: 未来に起こることは 何もわからないわ お妃さま ご安心あそばして お城へいかれますよう よいことも悪いこととも 予期せぬときに 訪れるの…

* 乙女の祈り  メーリケ

星は きらめき 鶏の鳴く 朝まだき 乙女は かまどに 火を おこす 炎のかがやき うつくしく 火花が 飛び散り 覗いては 乙女の 悲しみ ますばかり そも 乙女の 胸に 夜中に こつぜん 顕れいでし 彼が夢の 思ひの深き なればこそ すると 泪が あふれ ぽたぽたと …

* 唱歌 鳥のさえずり   ズィーモン・ダッハ

衝動に 駆られたように 森にゆくと 森は 鳥のさえずりで 辺りいちめん 響き渡っていた さあ 無辜の子らよ 純朴なる 民よ おまえたちの メロディーの なんと 爽やかなことか 愁いなく 善きこと 神を讃え 早朝から 夜おそくまで いそしみ 励み 啼きつづける お…

*夏は夜:「枕草子」より :

Im Sommer ,ich mag die Nacht gern, Nicht nur wenn der Mond scheint, sondern das Dunkel auch, Als die viele Gluhwurmchen einander die Wege in ihren Flugen kreuzen, Oder als es regnet auch ...... ・夏は夜。 月のころはさらなり。 闇もなほ。 蛍…

*カッコウと負傷帰還兵: 

カッコウが啼いている。その啼き声は、辺りに響きわたり木霊している。すると、その啼き声に目ざめた夫は、かれは負傷帰還兵であったが、手足や体を思いきりの伸ばすと、心地よさそうに呻き声をあげた。そして傍らの妻の手をつかもうとした。だが、妻はその…

*意識的な散文 :《西東詩集》より ⑥

ゲーテの晩年になった「西東詩集」は、詩的様式が散文に著しく近づいていった。そこには体験内実と表示される意識との間に、<距離>があったからである。故に、そこでは半ば抒情的に教訓が語られるという表現形式が多々見られるのである。言い換えるならば、…

*第二の青春 マリアンネ:「西東詩集」より

ゲーテ晩年になった「西東詩集」の萌芽として、新たな恋愛対象として出逢ったマリアンネ・フォン・ヴィレマーがいる。このマリアンネはズライカとして「西東詩集」に重要な形姿として現われてくる。つまり、そこには最後の恋愛体験としてのマリアンネ体験に…

*異国の詩人、ハーフィス : 「西東詩集」 より ②

さて、「西東詩集」の理解には次の三つの視点からみてみるといい。 その①はゲーテが遠い場所、東洋に目を向けたのは何故か、そして異国の詩人ハーフィス(1320-1389)に模範を執ったのは何故かということ。 その➁はいくつかの書からなるこの詩集の内実とその区…

*「西東詩集」 ゲーテ 覚え書き

「西東詩集」West-Ostlicher Divanはゲーテ晩年(65-66歳)の作である。1749年生誕のゲーテは1832年に物故するまで、83年という星霜を生き抜き、かつ、その大半を休むことなく精力的に活動しつづけた文豪・詩人であり、その間にはワイマールという小公国で宰相…

*戦後ドイツ短篇 クルツゲシヒテの タイトル考

*各作品のタイトルには、時代の状況もまた、反映されているものである。 レクラム版より、50作品のタイトルから。 ◇ 語られた時代: ❶ 世界の裏表 戦時下における現実: 1.「陽動作戦」W.シュヌレ 陽動作戦とは味方の真の作戦を隠し、敵の判断を見誤らせるため…

*御復活前の七旬節の日曜日:  ランゲッサー

人類は ふかきこころで待ち望む 石からさえ血のにじむ孤独のふちの悲しみから 肉体は樹木や動物にも 朋友とならんことを望み 溢るる愁ひの呪縛から解き放たきと おお 愁ひに満ちた苦悩よ !.. 清水や棕櫚の樹や繁みに向ひ 愛のエクスタシーのなかで腕を拡げ …

*母なる自然: メーリケ解明

*1875年のメーリケの死後、彼の才能を理解するひとは、ほんの一部にすぎなかったが、19世紀末になると次第にシュヴァーベン・アレマン地方で評価されはじめ、その後、H.ヴォルフWolfによってドイツリートと して作曲されると広く広まり、 メーリケの評価は今…

* 抒情詩人 : メーリケ .

* ゲーテ以降で、その多様性と独創性でメーリケほど抒情詩において抜きんでた詩人は、そう多くは見当たらない。が、彼の生涯は決して耀いていたのではなかった。寧ろ、憂慮に富んだものであった。zB.弟の死、姉の衰弱、別の弟カールの政治活動による拘禁、ま…

*メーリケ:書簡集 より

1875年6月4日、シュトゥットガルトで亡くなったメーリケ(享年71歳)は、それより10年前に、すでに詩作は衰退していたが、最も旺盛だったのは1837年から38年にかけて(33歳から34歳)で、38年には150篇の詩を書き一冊に纏(まと)めていた。 死の20年前に出た1855…