HERR*SOMMER-夏目

現代ドイツ作家・詩人の紹介を主に・・・

2020-01-01から1年間の記事一覧

* メッケルの「雪獣」:

K.Rothmann; Dt. sprachige Schriftsteller seit 1945 メッケル「雪獣」: メッケルは作家としてばかりでなく、グラフィックデザイナーとしても有名で、21歳の時7篇の詩と4つのグラフィックからなる作品集「隠れ頭巾」でデヴューした。その特徴はメルヒェン調…

*エッセイというジャンルの発展:

内部世界の充実は 犠牲によってのみ得られる。 ルドルフ・カスナー 19世紀末、転換期のウイーン文学界で際立ったのはエッセイというジャンルが新たな意味で発展したことであった。そのよき例として、ホフマンスタールが挙げられるのだが、彼は外国の詩の持つ…

*フォルキアスの娘たち: より

・フォルキアスの娘たちの誰なの わたし あの醜い姉妹に比べてみたわ 生まれながら白髪で 代わるがわる 一つ目と一本歯を使った フォルキアーデンの 娘たちのひとりなのね ---Bist du vielleicht der grau-gebornen , Eines Auges und Eines Zahns Wechselsw…

*「ヘジラ」:「西東詩集」 より 

「西東詩集」はゲーテ晩年になった作だが、東洋はまさに族長的な世界の地であった。そして、それは瞑想的な老年ゲーテの気分に適合した。そのような現実性から隔たった避難所としての東洋にゲーテは親縁性を見たのであった。 巻頭の詩、ヘジラHegire(移住)は…

*孔子と子路: 中島敦の「弟子」より

「山月記」などで知られている中島敦は33歳という若さで夭折しているが、彼の作品は漢文調で書かれ、そのリズムは簡明であり魅力に富む。書き残した数は少ないが、そんな中の一つに「弟子」という短編があり、これは顔回や子貢といった孔子の高弟のひとり、…

* 噴水 :ボードレール「惡の華」より

噴き上げる 水は千々の 花と咲き 嬉々として 月の光の 色に染まり しとど 泪の雨のごと 落ちゆかん・・ おお 黒洞々なる 夜の闇に 美しきひとよ きみが胸に この身を傾け 池のほとりに すすり すすりて 泣きやまず されば 円かな月よ さざめく水よ 祝福され…

* 懐かしき夢: ハイネ より

懐かしき 夢を みた: 五月の 夜の こと ぼくたちは 菩提樹の 木蔭(こかげ)で 永久(とわ)の 愛を 誓って いた それは 新たな 誓い くすくす 笑ひ 愛撫し 接吻を 交わし あった ぼくは 誓いを こころ に留めた けれども ぼくを 苦しめて いた とは おお 恋人よ…

*西洋の現代文学に関して:

・西洋の現代文学に関して:-- 世界をラジカルに懐疑し信じられないという立場の代表が、フランスの実存主義の作家、例えばサルトルとカミユならば、ドイツ文学圏のカフカは世界観はこれに近いが、異なるのはいかにしたら打開できるか問うところである。: 前…

*アヤックスの盾には絡みつく蛇が:

* 8909- 9126 : ・この箇所はフォルキアスの台詞、「薄曇りの朝、輝きまばゆく真昼の太陽よ!.」以下、第三幕その1の最後までの場面であるが、それまでのヤンブスのトリメーター、短長・抑揚格の3音格詩がトロケーウスの長短・揚抑格のテトゥラメーター、即…

*奇(くす)しき薔薇 :

バラの香りの愛(いと)ほしく 息吹の真っ赤に燃ゑしとき 愛しきバラの香よ ! そは聖母マリアの御慈悲により バラは奇しき薔薇となり されど タンポポの花咲き終わるや そが冠毛は風に舞ひ四散して 遠く近くに着きしなり されど そが繰り返し繰り返すは 閉ざさ…

*木の葉が落ちる : シュトルム 

霧がたちこめ 木の葉が落ちる ワインを注(つ)げよ まろやかなワインを !... この憂き日を かがやかしい日にしたいのだ 外は荒れ狂っているが この世はすばらしい かくも 神々しきゆゑに!..... けれども ときおり こころは泪に濡れる だが それに構ふてゐては…