HERR*SOMMER-夏目

現代ドイツ作家・詩人の紹介を主に・・・

2021-01-01から1年間の記事一覧

*オタの谷 :モーパッサン「女の一生」より

創造は すべての胚芽を内に含み 花や果実は樹の枝につき生育する 。 思想と生命も また同じ: 創造の懐に抱かれ育っていく 。 * 彼にとって生殖とは、普遍的な自然の大法則に他ならなく、神聖で犯さざるべき崇高な行為なのである。これによって《存在》の不変…

* .デュレンマットの戯曲:「物理学者」

1921年、スイス生まれのデュレンマットのデヴュー作は47年に上梓した戯曲「聖書に曰く」であるが、最初に結婚した女優の死後、52年には再婚した経歴を持っている。 世界的に成功を治めた作品は56年に上梓した悲喜劇「貴婦人、故郷に帰る」だが、もう一つの成…

*「悲の器」:高橋和巳より

「わたしは文学者ではない。事実性と論理性のほかに文章を不必要に飾ることに対して好意的ではない。事実の証拠と構成する人的動機にしか興味を覚えぬのだ。長年にわたり、そのように鍛えたのであり、その性向に対して不満があるはずもない。いま綴り始めた…

*ヨーンゾンの「推測」:

1934年、現ポーランド領に生まれたヨーンゾンのデヴュー作となった「ヤーコプについての推測」はこんな内容である。; 1956年11月の或る日、霧の中で28歳の鉄道保安員ヤーコプはドレスデン駅のプラットフォームで機関車に轢かれた。すると、推測はこんなふう…

* チェーホフ短編より

「そんな哲学は暖かくオレンジの薫るギリシアででも説くがいい。ここじゃ気候に合わない・・」 「あの奇人哲学者ディオゲネスに書斎や温かい住居は必要なかった。暑いところですから。のんびり樽の中に寝転んでいたという。然し、ロシアに棲むとなれば、そう…

*鐘の声: :ゲオルゲ より

鐘の響きに 不思議な歓び 聞き覚えあり こころ惑いしあの頃は 力奪われ いまに至りて 怖れはなく 苛立ちもなく 高らかに 厳かに響きわたれば 今は 希望と忘却と宥恕の声!..... S. George: Die Glocken ゲオルゲは1868年生まれで、ドイツ抒情詩に新たな言語芸…

*女の 首飾り: モーパッサン より

「え、なんですって!..あなた、返してくれたじゃない」 「それがね、失くしてしまったのよ。・で、全く同じようなのを返していたの。それで、その支払いに10年かかってしまったわ。わかるでしょう、容易でなかったのが。。余裕なんて なかったのですもの。・…

*「若い二人」: ホフマンスタール

「美しき惑ひの年」Das Jahr der schonen Tauschungen はカロッサCarossaの医師を目指して学ぶ学生時代を扱った短篇で、こんな詩も挿入されて親しみある詩である。・ 「詩だよ!.. 印刷されてない。 詩人の自筆だよ」フーゴーは手にもった封書を振ってみせ、…

*ブナの森?..ダッハウ?..それとも、:

「それにしても、あそこの老紳士は何を話しているのだろう。誰かが処刑されたとか」 ベルリンを貫流しているシュプレートンネルは占領された折り、一部の狂信者により、2,3週間ほど前、水浸しにされてしまったのだが、いまだ地下鉄は寸断され、乗客は歩くほ…

* ヴァルザーの「フィリップスブルクにおける様々な結婚」: 

ヴァルザーの「フィリップスブルクにおける様々な結婚」: これは彼が30歳の時に発表した処女長編で、カフカにも似た寓意的な不確かさによってグロテスクな関係を風刺し、ドイツの現代社会を描き出した作品である。 そこには四組の男女による放蕩的、姦通物語…

*ニーチェと学者詩人:

学問と芸術とに心砕いた哲学者 ニーチェ: 彼は「偶像の黄昏」で ブルクハルトを尊敬すべき友人と述べ 彼の「イタリア ルネッサンス」に 学問と芸術の美しい融和を みとめていた ルネッサンスの詩人は また学者でもあった: 彼らは古典古代の再発見をしたのだ…