HERR*SOMMER-夏目

現代ドイツ作家・詩人の紹介を主に・・・

*「古代ワルプルギスの夜」: 魔女 エリヒトーの独白:

 

*場面は: ファルザスの古戦場で、辺りは  暗黒である。

 魔女・エリヒトーの独白 :

 ハーイ、あたしはエリヒトー、夜の魔女よ

毎年のことだけど、今宵も 魔女たちの祭りに 参上したわ

やくざな詩人たちが、大げさに悪しく言うほど

 不気味な女では ないのよ

褒めるにしても、貶(けな)すにしても、

詩人というのは  際限を知らないのよ

   あら、見渡せば 谷間はもう、灰色のテントばかり、

     波打っているわ

あの蒼白く 霞んでいる 波のまにまに、

過ぎし日の 不安や恐怖が、夜の幻の中に

   交じりあっているのね 

もう何年、くり返されてきたことかしら そしてまた、  何年、繰り返されて いくのかしら

   そう やすやすと 自分の国は、人手に

   渡したくないものよ

力ずくで掠奪し、力ずくで統治しても、

 長続きするはず ないものなのにね

他の国を奪い取り、支配したがるのは、権力欲と

利己的愛国心と 驕慢のためかしら

そうよ、ここも そういう 大きな戦(いくさ)のあった

古戦場なのよ 暴力と暴力とが 対峙した古戦場なのよ 美しい花や 自由の花環が 

あえなく 引き千切られた ところなのよ

月桂樹の冠が 略奪者の頭を 

 虚しく飾ったところなのよ

こっちの岸辺では、ポンペイウスが 

過去の栄光に 酔っていたかと 思えば、

対岸では シーザーが 運命の秤(はかり)の針を

覗っていたところでも あるのよ

やがて、いくさが 始まったわ けれど、

勝利の女神は どちらに 微笑んだか

  誰も知ってのとおりね