HERR*SOMMER-夏目

現代ドイツ作家・詩人の紹介を主に・・・

2023-05-01から1ヶ月間の記事一覧

*漱石の講演:鴎外「青年」より  

案内されて漱石が現れた。どんな人かと純一は見つめる。 漱石の背丈は中ぐらい、顔にはカイザー髭。 漱石は鎮まるのを暫く待って 口を開いた。 「イプセンの話をということでありました。が、考えたことはありません。 ですから、知識は諸君とおなじ」 声を…

*囚われの男:

いとこのアルバーンは、今、どうしているのだろう。噂を聞かなくなってから久しい。それほど親しく付き合ってきたわけでもない。 彼の一族は大家系で、関心を寄せたことがあった。 それはアルバーンが特有の主張、「嘘じゃない。悪いのは、俺ひとりなのだ!」…

* 鐘の音 :デーメルより

そして 日暮れに 鐘の音 : 見回せば あちこちの小屋から 煙が 立ち上り こずえは 温かく包まれて さあ 出ておいで 風が そよぎ 囁いているよ: 春だ 出ておいで 子らが 毬投げして遊んでいるよ !... 白樺や楓の若葉も 息づき 戯れている!... 草原の爽やかさを…