HERR*SOMMER-夏目

現代ドイツ作家・詩人の紹介を主に・・・

*「悲の器」:高橋和巳より

 

「わたしは文学者ではない。事実性と論理性のほかに文章を不必要に飾ることに対して好意的ではない。事実の証拠と構成する人的動機にしか興味を覚えぬのだ。長年にわたり、そのように鍛えたのであり、その性向に対して不満があるはずもない。いま綴り始めたこの文章には、少なくとも厳格にTatsache-Wahrheit 即ち、 事実に即した真実を挙げておこうと欲しているのだ。それ故、必要と思われる経過の記述は細大漏らさずなすが、不必要な事柄は善悪や美醜に関わらず省略するであろう。

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ここに出てくくる「私」は、嘗て最高検察庁の検事であり、今は大学法学部の教授であるが、二人の女性を同時に愛し、それを押し通そうとするエゴイズムを赦されざる人間的罪悪として、カトリック教会の司祭をしている実の弟から総合雑誌上で弾劾されてしまうのである。

 

  

 

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