ラーベは結婚したのが31歳、四人の娘がいた。長女が誕生したのが32歳のとき、また、次女は37歳のとき、三女は41歳、そして四女は 45歳の時の子である。が、末娘ゲルトルートには悲しい思い出があり、というのも、16歳の若さで病死していたからである。この時ラーベは61歳。愛娘(まなむすめ)に先立たれた悲しみに、以後、書くものからユーモアが消えていく。そして、それから4年後に書いたのが「フォーゲルザングの記録」。そこでは主人公のフェルテン・アンドレースが幼い日の夢をいつまでも追い続け放浪し、その挙句、幻滅、果てには 大都会ベルリーンの片隅で ひっそり死んでゆくさまが描かれた。そこに引用されたこんな一節。:
"無心になるがいい !.. 世の中は 揺れてやまぬ それゆえ 心は強く持ちつづけるがいいのだ :
これは文豪ゲーテが若き頃、友人ベーリッシュに贈ったオーデ(頌詩)の一節で、ラーベはこれを「フォーゲルザングの記録」のなかで 幾度も繰り返す。
こうして「シュトップフ・クーヘン」(饅頭男)と この二作品に於いては、新しい時代に順応できず、みずからに忠実に生きようとする人間を扱っているのである。
・「フォーゲルザングの記録」 Die Akten des Vogelsangs. 65歳の作
Sei gefuhllos, / Ein leicht-bewegtes Herz / Ist ein elend Gut / Auf der wankenden Erde....
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Die Akten des Vogelsangs:---語り手、カール・クルムハルトの回想。 主人公はフェルテン・アンドレース。
Am Anfang dieses Romans; 冒頭より:
An einem November-abend bekam ich , Ober-regierungsrat Dr. jur.K. Krumhardt, unter meinen ubrigen Post-sachen folgenden Brief in einer schonen, festen Handschrift , von der man es kaum fur moglich halten sollte, dass sie einem Weibe zugehore.; Lieber Karl ! Velten lasst Dich noch einmal grussen. Er ist nun tot, und wir haben beide unseren Willen bekommen.---Er ist allein geblieben bis zuletst ,mit sich selber allein. Dass ich mich als seine Erb-nehmerin aufgeworfen habe, kann er freilich nicht hindern; das liegt in meinem Willen ,und aus dem heraus schreibe ich Dir heute und gebe Dir die Nachricht von seinem Tode und seinem Begrabnis . Dieser Brief gehort, meines Erachhtens, zu der in seinen Angelegen-heiten (wie lachelich dieses Wort hier klingt) noch notigen Korrespondenz....>.
--> Wenn wir nun zusammen-sassen ,so konnte ich Dir wohl noch vieles sagen. Zu schreiben weiss ich nichts mehr; ich bin auch sehr mude. Mit den besten Wunschen fur Dich und Dein Haus , Helene Trotzendorff ,Widow Mungo ヘレーネ・トゥロッツェンドルフ、未亡人ムンゴ より 。。。・
*この「フォーゲルザングの記録」では、主人公の行動を 身近な人物が一人称の語りによって描き、語り手と主人公との考えや立場の対置、現在と過去との行き来といった方法で描き出している。-- この作品はラーベの後期の作品群に属し彼の文学的な成熟を示した一つである。
ラーベは「フォーゲルザングの記録」で描くのは、社会的な変化に適応できない個人の孤独と疎外感であり、時代の流れの中での人間の洞察である。。。-- 主人公は、社会の期待とは異なる価値観を持っているがゆえに、周囲との葛藤が絶えず付きまとっている。これは、ラーベがしばしば取り上げるテーマで、彼の作品には個人の内面世界と外部世界との間の緊張が描かれ、また、社会的な地位や成功を追求することの虚しさを示唆し、人間性とは何か、幸福とは何かという問いを投げかけている。-- *zkttne38737.hatenablog.com/ 2023/11/07 "" ラーベの「フォーゲルザングの記録」は複雑な人物造形で知られ、この作品には主人公フェルテン・アンドレースをはじめ、彼の人生と交錯する多くの人物が登場する。--まず、主人公のフェルテンは幼い日の夢を追い続けたため放浪者となり、竟には大都会ベルリンの片隅で ひっそりと死んでいく。社会の変化に適応できない彼は疎外感を抱えながら生きる人の象徴でもあるのだ。-- ラーベはこうして、登場人物を通じ個人の内面と外界との葛藤、社会的地位や成功の追求の虚しさ、そして人間の幸福についての普遍的な問いを探求しているのである。----