HERR*SOMMER-夏目

現代ドイツ作家・詩人の紹介を主に・・・

*「シュレミールの不思議な物語」から

ドイツ人にもなれきれず、故郷フランスも異国と感じていた詩人の話。彼はある時、新聞を手にし コッツェブーを隊長とする学術探検隊が近々、北極をめざし組織されたというニュースを目にする。すると、コッツェブーの斡旋で、かねてからの願望が思いもかけず実現する。

時は1815年の6月。南太平洋、及び、世界全般におよぶ調査探検隊の随行科学者に任命され、ブラジルやチリ、カムチャッカやマニラ、喜望峰、ロンドンと廻り、ロマンチックで異国への憧憬を満たしてくれる三年間を過ごす。これは彼の生涯でもっとも、豊穣な時期であり、これによって精神は種々なイメージと素材の宝に満たされ文筆活動の基盤となっていく。 

 この髪を垂らし上品な顔立ちの長身な詩人、シャミッソー詩集は50歳の坂を超えた1831年に、ようやく上梓されたが代表的な詩篇は「女の愛と生涯」Frauen-Liebe und Lebenで、他方、小説では「ベーター・シュレミールの不思議な物語」Peter Schlemihls wundersame Geschichteで、この作品は、友人のフーケから、「旅で、すべてをなくしてしまったのではなかろう、影までも!?」と水を向けられたことが機縁となり執筆された男の奇譚なのである。それに加え、別の機会に、ラ・フォンテーヌの書物を捲(めく)っていて、こんな場面に遭遇したことも動機となっている。つまり、愛想のよい男が、或る席上で云われると何でもポケットから取り出して見せたのである。

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