夫人のマーティルデさんは庭先で洗濯物を干し訊ねてきた。 その間、青い顔のアルバーンは、話に耳を凝らしていた。 本当に、いいことなど ありませんでしたわ、夫人は云った。すると 悪いのは、この俺のせいだ。Ich bin schuld daruber.... アルバーンは いきなり、口を挟んできた。
「空襲は日毎に、ひどくなっていくばかりで」 それも悪いのは、この俺のせいだ。 「みな、すっからかんになって・・財産も、名誉も、血族も・・」 悪いのは、この俺のせいだ。 Ich bin schuld daruber. 「婿も行方不明ですし、息子も出征し、いつ戻ってくるか」 悪いのはこの俺のせいだ。アルバーンは繰り返した。
「悪い悪いと仰いますけれど、何故、あなたが・・ 自分一人が悪いなんて」 すると、マーティルデは溜息をつき、首を横に振り云った。 「主人は選択を誤ったからなんです・・10年余り前でしたが、選択を誤ったからなのです。それを克服できないまま・・」
「でも、大方でしたら、それは・・」 と、その時、サイレンの音が鳴り響いた。骨の髄まで染みわたるほどに。飛行機が飛んでくるや、騒音を響かせ、完璧な編隊で跡を残し去っていく。渡り鳥が南へ渡っていくように、翼をキラリと輝かせて。どんな弾薬を積んでいるのか忘れてしまうほど、驚き嘆息をつき。が、そのとき アルバーンは両腕を伸ばしたかと思うや頭を反らし、訴えるように叫んだ。
頼む。俺の言い分を受け入れ そして、裁いてくれ・・嘘じゃない。悪いのは俺一人だ アルバーンは叫び、胸の奥を裁きに差し出すように激しく打った。 「嘘じゃない、悪いのは俺一人だ」Ich bin schuld daruber...
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E.Langgasser; Die Sippe auf dem Berg und im Tal
Gesammelte Werke Claassen Verlag 1964 S.323ff...
Aus: dem Torso 「囚われの男」
Erste Ubersetzung von :Masahiro Natsume 1980 10.