HERR*SOMMER-夏目

現代ドイツ作家・詩人の紹介を主に・・・

* トルストイ「アンナ・カレーニナ」: より

 幸福な家庭は似通っているが、そうでない家庭の様相はさまざまである。:  

アンナ・カレーニナ」のこの冒頭部。

  よく知られた一節で、この長編の第一部の11には、ハイネの詩の一節も挿入されている。: 

  抑えがたき この世の欲情に 

       打ち勝てば この世は わが春だ 

    たとえ 叶わぬとも

 燃えた心に 歓びが のこっているなら・・ 

                         *- *- *1 )*

       この詩の一節はヨハン・シュトラウスオペレッタ「蝙蝠」でも使われている。

Himmlisch ist's ,  wenn ich bezwungen 

Meine irdische  Begier ; 

 Aber noch wenn's nicht gelungen,

  Hatt' ich auch  recht hubsch Plaisir !.                         

*1: ( *       

「だけど、どういうことだね」オブロンスキーは苦笑した。

レーヴィンの心の中は分っていた。 

「つまり、こうだ。結婚していても、きみはもちろん、妻を愛している。 が、ほかの女に惹かれることも ないとはいえない」 

「分からぬ。満腹のときに、パン屋の前を通りかかり、ひとつ失敬するようなものじゃないか・・」

オブロンスキーの目が、いつもより輝いていた。   

「だが、いい香りがしてくると、つい 手に取ってみたくなるものだ・・」

     ***