幸福な家庭は似通っているが、そうでない家庭の様相はさまざまである。:
「アンナ・カレーニナ」のこの冒頭部。
よく知られた一節で、この長編の第一部の11には、ハイネの詩の一節も挿入されている。:
抑えがたき この世の欲情に
打ち勝てば この世は わが春だ
たとえ 叶わぬとも
燃えた心に 歓びが のこっているなら・・
*- *- *1 )*
この詩の一節はヨハン・シュトラウスのオペレッタ「蝙蝠」でも使われている。
Himmlisch ist's , wenn ich bezwungen
Meine irdische Begier ;
Aber noch wenn's nicht gelungen,
Hatt' ich auch recht hubsch Plaisir !.
*1: ( *
「だけど、どういうことだね」オブロンスキーは苦笑した。
レーヴィンの心の中は分っていた。
「つまり、こうだ。結婚していても、きみはもちろん、妻を愛している。 が、ほかの女に惹かれることも ないとはいえない」
「分からぬ。満腹のときに、パン屋の前を通りかかり、ひとつ失敬するようなものじゃないか・・」
オブロンスキーの目が、いつもより輝いていた。
「だが、いい香りがしてくると、つい 手に取ってみたくなるものだ・・」
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