HERR*SOMMER-夏目

現代ドイツ作家・詩人の紹介を主に・・・

* ヴォルフの「何処にも居場所はない」:

 

*Christa Wolf;クリスタ・ヴォルフ:「どこにも居場所はない」短編 79.  

   ともにみずから命を絶った短編の名手で簡潔な文体で描くクライスト1777-1811,とカロリーネ・ギュンデローデ1780-1806,との、( 因みに、前者は34歳、後者は26歳で夭折している)1804年における 架空の邂逅が描かれたが、ミヒャエルはこの叙情的な対話と思考を、不安と動揺として解釈することに躊躇はなく、却って、云うのである。:この書物の中で叫ばれていることは誰も聞き漏らさないであろう。つまり、ヴォルフの声が彼女の棲む国では寂し気に感じられるのだが、それは嘗てのカロリーネ・フォン・ギュンデローデやクライストが感じていたのと似たもので、つまり、ここではヴォルフと東独は互いに、行き違いが生じるばかりで、それは、一女流詩人と一国家との、ポエズィーとファンタジーの擁護者と、浸炭硬化した権力者との行き違いと相似たものとして捉え、作者みずからの苦しい立場を暗示しているのである。

 

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      なお、ギュンデローデはドイツの女流詩人でロマン派の詩人ブレンターノとその妻ベッティーナの友人でもあり、彼女は死を渇望するような陰鬱な一連の詩を美しくも残している。

  また、浪漫的ギリシア最大の女流詩人サッポー(前612年頃~ ?) はこう嘆息して云うのである。:ええ、おそらく、理解はできますわね。私たちは束縛され従属から免れ得ないとしても、思考や想像の中では、そこから離れ抜け出ようとしているのですものね。けれども、現実は決して、許されず叶うことではありませんのよ。・・