「え、なんですって!..あなた、返してくれたじゃない」
「それがね、失くしてしまったのよ。・で、全く同じようなのを返していたの。それで、その支払いに10年かかってしまったわ。わかるでしょう、容易でなかったのが。。余裕なんて なかったのですもの。・でも、なんとか やっと終わったわ。だから、とても嬉しくてね。こころがすっきりしましたもの」
フォレスチエ夫人はそれを聞くと云った。
「別のダイヤの首飾りを買って代わりに返してくれたって云うのね、」
「ええ お気づきにならなかった?..そうね そうでしょうね。そっくりでしたもの」
マチルド・ロワゼルは云うと、無邪気に喜び微笑んだ。
フォレスチエ夫人はそれを目の当たりにして動揺を隠せなかった。
「まあ、どうしましょう。マチルド、だってね、紛いものだったのよ。せいぜい 500フランぐらいの・・」
***
*運命の間違いによってか、貧しい勤め人の家庭に魅力ある娘が生まれることがある。マチルド・ロワゼルもそういった娘たちの一人で文科省に勤める小役人と結婚していたのだ。・・・
Maupassant: La Parure より