「雀横丁年代記」は、一人の老人が 過去を振り返り 回想していくスタイルで書かれている。:
そこはベルリーンの裏横丁。そこでの小市民の運命と日常が、時代の運命と重ねられ ユーモアとペーソスをまじえて書かれている。:
〈 闇が どれほど 深かろうと、一条の星の光が 煌(きら)めいていた。:
エリーゼである。( S.127..;ブラウンシュヴァイク版 ラーベ全集のページをしめす。)
〈 われわれは 実に愚かなものだ。笑われることを怖れ、胸の底から湧き上がる優しい感情を 押し殺してしまう。泪を恥じたり 罵(ののし)ったり、退屈気に渋面をつくったり、また、悲しみを 喜劇の仮面の下に演じたり、歓びも悲劇の仮面の下に演じたり。こんな偽(いつわ)りに、みずからも苦しみ 虚しさを感じたりしているのだ。 ebd.S.142.
〈 青春は眩(まばゆ)い。幸福を感じるのに わずかな月の光があればよく、リートの一節があれば 詩情を感じるのだ。 ebd. S.160..
W.Raabe. Die Chronik der Sperlingsgasse S.163...
Samtliche Werke. Braunschweiger Ausgabe Band Ⅰ.
VandenHoeck & Ruprecht in Gottingen 1965.
この作品は厳しい批評家ヘッベル*⑪からも好評で、成功作となった以来、 ラーベは 初期の作品「春」や「フィンケンローデの子供たち」「ディーナウの貴公子」、「聖なる泉」*12といった作品を発表していくのである。
(注)-:
⑪ヘッベル C.F.Hebbel 1813- 63 : 劇作家。 19世紀ドイツリアリズム戯曲の完成者。処女作「ユーディット」「ギーゲスとその指輪」など。Judith, Gyges und sein Ring. usw---
「春」: Ein Fruhling 、26歳の作。 / 「フィンケンローデの子供たち」Die Kinder von Finkenrode. 28歳の作。/ 「ディーナウの貴公子」Der Junker von Denow. 28歳の作。 / 「聖なる泉」Der heilige Born. 30歳の作。