おお 人間! その純(おぞ)ましさよ:
ある者は法学を ある者は医術を追いもとめ
ある者は司祭にならんと また ある者は詐術に手を伸ばし
はたまた 快楽に酔い 懶惰(らんだ)を貪( むさぼ)る輩もいる・・
わたしは だが それらの塵労からは解かれ
ベアトリーチェに案内され 天を目指した そして
霊の光が戻ってくると おのれを定着させた すると
話しかけてきたトマス・アクィナスの零体から かく語るを耳にしたのだ。:
輝きは増し 永遠の光を見つめていると 汝が思ひは判る だが
きみは言葉を解せず戸惑うや 分かり易くと願った・・
さても 天使であれ 人間であれ 造られた神の摂理は
なぜに捨て賜う と呼ばわるイエスのために
二人の権能者を選び 左右に配し 道しるべに 定められたのだ。
一人は 天使で最高位階の 愛のセラフィムを想起させ、
もう一人は知恵深く 知に輝く天使ケルビムを想起させる
聖フランチェスコであった・・
*ダンテ「神曲」天国篇 第11歌より