侯爵夫人:
なぜ腹が立つのかしら、世の常なのに、
わたしにも 娘時代があった、でも 修道院から結婚生活に すぐ、
でも どうして、昔は可愛かった
なのに いつの間にか もうお婆さん、・・
どうして 神さま どうして わたしは ずっと 変わらないのに
たとえ 変わるが定めでも なぜ こんなに 見せつけられ
なぜ 隠してくれないの・・ わからない
でも 耐えるのが 人の定めね・・
道は さまざまだけど・・
*侯爵夫人は、従弟の青年貴族オクタヴィアンと愛人関係になり、一夜を共にする。が、婚約の使者として薔薇を渡しに行くと、オクタヴィアンは 若いゾフィーにひとめ惚れしてしまう。
*
あら また来たのね。 Ach du bist wieder da !..
いいの もう おしまいね いつものこと
楽しくて 悲しくて 自分でも 抑えきれない でも 自分に言い聞かせたわ
逆らいようもなく いいえ たとえ 逆らっても・・
もう やめて そんなに きつく抱くのは
オクタヴィアン:
きみは ぼくのものだ
夫人 :
だめ よして うちの元帥や 従弟オックスの・・
だめ 真似は よして
オクタヴィアン:
知るもんか きみは僕の恋人なのだ!.. もう 離すものか
侯爵夫人:
許して 時の流れには 勝てないわ 女ですもの・・
* Der Rosen-Kavalier ; Hoffmannsthal
「薔薇の騎士」より
・婚約の申し込みに使者が薔薇を渡しに行く。それが薔薇の騎士である。
これは1740年代のウイーンの貴族の恋愛がテーマの、リヒャルト・シュトラウス作曲による三幕もののコメディである。