83年という長い星霜を精力的に活動しつづけたゲーテ。
そのゲーテの晩年(65歳)の詩に、銀杏をうたった一篇がある。
約250篇からなる「西東詩集」West-ostlicher Divan のなかの一篇で、こんな詩である。
東方の国から はるばる 移植された銀杏
その銀杏の葉には ふかい味わいがある:
もともと 葉は一枚だが ふたつに わかれたもの
この二枚の葉が たがひに寄り添ひ 結びあふ・・
このように思ふと 葉のもつ意味が得心できる:
一枚でありながら 結ばれた 二枚の葉・・
詩的空想は比喩であり寓意的だが、第二の青春ともいえる心情を、東洋的な世界とめぐりあひ うたったものである。
因みに、恋人はフランクフルトの銀行家の妻で、30歳のマリアンネ・ヴィレマー。
若く感覚的な息吹に満ち、甘いも酸っぱいも心得ていた夫人だったのである。
Ginkgo Biloba ; Aus: Goethe Samtliche Werke Ⅱ-1-1..
Divan Jahre ,1814- 19 Hanser Vlg. S.118f....