HERR*SOMMER-夏目

現代ドイツ作家・詩人の紹介を主に・・・

* 星が輝く夜は・・:T. マンより

おっしゃる通り、と男は云った。

憂鬱に関しては その通りです。いつだって星が輝く夜は、また格別でして。

この男は詩を書いているな、とクレーゲルは思った。

夜も更け 風が激しい。

 クレーゲルはベッドに体を伸ばした。 眠れない。するとまた、甲板に行った。

 雲が月を掠め 海が踊っている。蒼白い光。 海は沸き立ち炎のよう。そして 泡の立つ峡谷のそばで、水沫が撒き散らされ、船は喘ぎ進んだ。                やがて、月の光を浴び岩が近づいてきた。

     「トニオ・クレーゲル」より