おっしゃる通り、と男は云った。
憂鬱に関しては その通りです。いつだって星が輝く夜は、また格別でして。
この男は詩を書いているな、とクレーゲルは思った。
夜も更け 風が激しい。
クレーゲルはベッドに体を伸ばした。 眠れない。するとまた、甲板に行った。
雲が月を掠め 海が踊っている。蒼白い光。 海は沸き立ち炎のよう。そして 泡の立つ峡谷のそばで、水沫が撒き散らされ、船は喘ぎ進んだ。 やがて、月の光を浴び岩が近づいてきた。
「トニオ・クレーゲル」より
おっしゃる通り、と男は云った。
憂鬱に関しては その通りです。いつだって星が輝く夜は、また格別でして。
この男は詩を書いているな、とクレーゲルは思った。
夜も更け 風が激しい。
クレーゲルはベッドに体を伸ばした。 眠れない。するとまた、甲板に行った。
雲が月を掠め 海が踊っている。蒼白い光。 海は沸き立ち炎のよう。そして 泡の立つ峡谷のそばで、水沫が撒き散らされ、船は喘ぎ進んだ。 やがて、月の光を浴び岩が近づいてきた。
「トニオ・クレーゲル」より