HERR*SOMMER-夏目

現代ドイツ作家・詩人の紹介を主に・・・

*囚われの男: 承前 

夫人のマーティルデさんは、庭先で洗濯物を干し、訊ねてきた。                その間、青い顔のアルバーンは、話に 耳を凝らし聞いていた。                     本当に、いいことなど ありませんでしたわ、夫人は云った。すると               悪いのは、この俺のせいだ。Ich bin schuld daruber....                                                         アルバーンは  いきなり、口を挟んできた。

「空襲は日毎に、ひどくなっていくばかりで」                        それも悪いのは、この俺のせいだ。                            「みな、すっからかんになって・・財産も、名誉も、血族も・・」                悪いのは、この俺のせいだ。 Ich bin schuld daruber.                                                       「婿も行方不明ですし、息子も出征し、いつ戻ってくるか」                                          悪いのはこの俺のせいだ。アルバーンは繰り返した。

「悪い悪いと仰いますけれど、何故、あなたが・・ 自分一人が悪いなんて」        すると、マーティルデは溜息をつき、首を横に振り云った。                   「主人は選択を誤ったからなんですわ・・ 以前、10年余り前でしたが、選択を誤ったからなのです。それを克服できないまま・・」

「でも、大方でしたら、それは・・」                         と、その時、サイレンの音が鳴り響いた。骨の髄まで染みわたるほどに。飛行機が飛んでくるや、騒音を響かせ、完璧な編隊で跡を残し去っていく。渡り鳥が南へ渡っていくように、翼をキラリと輝かせて。どんな弾薬を積んでいるのか忘れてしまうほど、驚き嘆息をつき。が、そのとき アルバーンは両腕を伸ばしたかと思うや頭を反らし、訴えるように叫んだ。

頼む。俺の言い分を 受け入れ そして、裁いてくれ・・                   嘘じゃない。悪いのは俺一人。                               アルバーンは叫び、胸の奥を裁きに差し出すように、激しく打った。             「嘘じゃない、悪いのは俺一人だ」Ich bin schuld daruber...

      ***))))

E.Langgasser; Die Sippe auf dem Berg und imTal

 Gesammelte Werke  Claassen Verlag 1964  S.323ff...

Aus: dem Torso  「囚われの男」

Erste Ubersetzung von :Masahiro Natsume  1980 10.

       f:id:zkttne38737:20200122092544j:plain