HERR*SOMMER-夏目

現代ドイツ作家・詩人の紹介を主に・・・

*: ソール・ベローより

「・・友人が綿花について 秘密の情報を流してくれた。勿論、そいつをごっそり買った。電話での買い付けで。すると 綿花の積み荷が、まだ海にあるうちに三倍に高騰し世界の綿花市場が てんやわんやになる。この船荷の荷主は誰かと云うことになった。無論、わたしだったのだが 信用調査されるや、ただの医者と分かると 取引はキャンセルだ。だが、これは不法行為だ。だから勿論、訴訟をしてやったさ・・」 

「われわれ科学者は、ウィルヘルムくん、不合理な罪について語るものだ」とタムキン博士は云った。                                    「だが、そういう状況になれば、金銭問題から 危害を加えたくなる。money(金銭)とmurder(殺し)は同じMから始まっているだろう。machinery(機械装置)も、それにmis-chief(危害)も・・」  すると ウィルヘルムは云った。                  「mercy(慈悲)というのもある」                             「なるほど 人情は 甘いmilkだ というセリフもある。たしか マクベスか何かに出てくる・・」

「まあ、これで事実がはっきりする。つまり、金儲けとは 攻撃に他ならない。それがすべてだよ、ウィルヘルムくん」   Saul Bellow:  Seize the Day!.. 

 

 ・ウィルヘルムの父親は元内科医で、今は隠退。だが、かなりの資産家。          息子の生き方には不満で 経済的援助は断っている。                       一方、ウィルヘルムは成功を求めるが うまくいかず、離婚調停中の 妻子の生活費のために、金銭上でも起死回生を目論んでいる。その彼に 商品相場に投資するよう仕向け、経済破綻に追い込むのはタムキン博士である。