「山月記」などで知られている中島敦は33歳という若さで夭折しているが、彼の作品は漢文調で書かれ、そのリズムは簡明であり魅力に富む。書き残した数は少ないが、そんな中の一つに「弟子」という短編があり、これは顔回や子貢といった孔子の高弟のひとり、子路を扱った作品である。
彼は遊侠の徒であり、見るからに精悍な青年だが、愛すべき素直さもある。そんな彼は近頃、噂の高い賢者の孔子を辱めようと、右手には牝豚を抱えて押しかけ、次のような問答を始めるのである。「汝の好むは何か・・」と孔子が聞く。
「我の好みしは長剣なり・・」青年は昂然と言い放った。孔子は思わず、ニコリとした。青年の声や態度に、あまりにも稚気なる自負を見たからである。
附; auf Deutsch:
Du, was magst du gern ?... fragte konfuzius.
Ich bevorzuge den langen Schwert. ,antwortete der Junge...