HERR*SOMMER-夏目

現代ドイツ作家・詩人の紹介を主に・・・

*文学・学問・詩: 余滴 Ⅰ

* ディオゲネスに関する逸話 : クライスト奇譚集 より

古代ギリシアの哲学者ディオゲネスは、ある時、 「死後に埋葬されたいところは、どんなところでしょう・・」と訊かれると、 「野原の真ん中でよかろう」 「えっ!..なんですって?..」 「鳥や野獣の餌食になってしまうではありませんか・・」 「ならば、傍らに…

*第二の青春 マリアンネ:「西東詩集」より

ゲーテ晩年の「西東詩集」には新たな恋愛対象として出逢ったマリアンネ・フォン・ヴィレマーが関わっている。 このマリアンネは ズライカとして「西東詩集」に重要な形姿として現われてくる。つまり、最後の恋愛体験としてのマリアンネ体験によって、ゲーテ…

* 「ナポレオン軍遠征に関する逸話」: クライスト奇譚集 より

「1809年、皇帝軍遠征に付き従いて」と題された書物のなかで、ナポレオン皇帝に関して、次のような逸話が記されている。--: それによると、作者はナポレオンの力量に憐憫の念を感じつつ、こんな奇妙な一例を伝えているのである。--: 周知のごとく、アスペル…

*オデュッセウス: ブレヒトより: Ⅰ-1 (*16)

ギリシアはイタケの王: 策謀家オデュッセウス。 彼は、世の男を魅惑した美声のズィレーネンの島が見えてくると船のマストに、みずからを縛りつけさせた。櫂(かい)を漕(こ)ぐ者らには耳に蝋(ろう)で栓をさせた。 美声に心が乱れぬようにとの配慮から。 島の近…

*シラーの情熱と苦悩・

23歳の時、短編小説集「小フリーデマン氏」を上梓し作家生活に入った.トーマス・マン。 26歳の時に、自身の一族の三代にわたる歴史を描き名声を得、そして後に、ノーベル賞受賞作となった初めての長編小説「ブデンブローク家の人々」。 彼の短編小説のひとつ…

*孔子と子路: 中島敦の「弟子」より

「山月記」などで知られる中島敦は33歳という若さで夭折しているが、彼の作品は漢文調で書かれ、そのリズムは簡明であり魅力に富む。 書き残した数は少ないが、そんな中の一つに「弟子」という短編があり、これは顔回や子貢といった孔子の高弟のひとり、子路…

*比喩としての銀杏の葉:「西東詩集」より

83年という長い星霜を精力的に活動しつづけたゲーテ。 そのゲーテの晩年(65歳)の詩に、銀杏をうたった一篇がある。 約250篇からなる「西東詩集」West-ostlicher Divan のなかの一篇で、こんな詩である。 東方の国から はるばる 移植された銀杏 その銀杏の葉…

*K・ハムスン: ノルウェーのノーベル賞作家

1859年生まれのノルウェーの作家 K. ハムスン。: 彼は若き頃は貧困と苦労をし、アメリカにも渡りいろいろな職業にも就く。が、30歳にして小説がベストセラーになると一躍、脚光を浴びるや、次々と長編を出し、1917年には「土の恵み」で田舎生活を賛美した小…

*エッセイというジャンルの発展:

内部世界の充実は 犠牲によってのみ得られる。 ルドルフ・カスナー 19世紀末、転換期のウイーン文学界で際立ったのはエッセイというジャンルが新たな意味で発展したことであった。そのよき例として、ホフマンスタールが挙げられるのだが、彼は外国の詩の持つ…

*孔子と子路: 中島敦の「弟子」より

「山月記」などで知られている中島敦は33歳という若さで夭折しているが、彼の作品は漢文調で書かれ、そのリズムは簡明であり魅力に富む。書き残した数は少ないが、そんな中の一つに「弟子」という短編があり、これは顔回や子貢といった孔子の高弟のひとり、…

*西洋の現代文学に関して:

・西洋の現代文学に関して:-- 世界をラジカルに懐疑し信じられないという立場の代表が、フランスの実存主義の作家、例えばサルトルとカミユならば、ドイツ文学圏のカフカは世界観はこれに近いが、異なるのはいかにしたら打開できるか問うところである。: 前…

*第二の青春 マリアンネ:「西東詩集」より

ゲーテ晩年になった「西東詩集」の萌芽として、新たな恋愛対象として出逢ったマリアンネ・フォン・ヴィレマーがいる。このマリアンネはズライカとして「西東詩集」に重要な形姿として現われてくる。つまり、そこには最後の恋愛体験としてのマリアンネ体験に…

*戦後ドイツ短篇 クルツゲシヒテの タイトル考

*各作品のタイトルには、時代の状況もまた、反映されているものである。 レクラム版より、50作品のタイトルから。 ◇ 語られた時代: ❶ 世界の裏表 戦時下における現実: 1.「陽動作戦」W.シュヌレ 陽動作戦とは味方の真の作戦を隠し、敵の判断を見誤らせるため…

*「アンティゴネー」  ソフォクレス 

ソフォクレスによって書かれ、前441年に上演されたギリシア劇「アンティゴネー」は、攻めよせた敵方の骸(むくろ)を葬(ほうむ)ることを禁ずる掟(おきて)に、敢然として逆らい、死に処せられるオイディプスの娘、アンティゴネーの悲劇だが、そこに出てくるアン…

*「語り得ないことに関して、人は 沈黙していなければ ならない」:

文学史家、K.ロートマンの著から: 「オーストリアはウィーン生まれのヴィトゲンシュタイン1889-1951は、生涯にわたって言語による表現記述の可能性と限界を思考した著名な哲学者だが、<語りうるもの>の領域、zB.自然科学などは、はっきりと語り、<語り得ない…