「死後に埋葬されたいところは、どんなところでしょう・・」と訊かれると、
「野原の真ん中でよかろう」
「えっ!..なんですって?..」
「鳥や野獣の餌食になってしまうではありませんか・・」
「ならば、傍らにステッキでも置いておくがよかろう。・・」
「どういうことでしょうか?..」
「それさえあれば、追い払うことができる、何が来ようと、野獣が来ようと」
「追い払う?..どのように?.. 死んでいて、感覚もないのに・・」
「ならば、わしの死骸が鳥や獣に食べられようと、痛くも痒くもないではないか」
H. von Kleist: Diogenes
Samtliche Werke, Hanser Verlag. ebd. S.284f... Kleist 奇譚集より
ディオゲネスは「著名な哲学者たちの生活と意見」という奇書の著者として有名。これは10巻よりなり、真偽かまわず、逸話や名文句を収集した。
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古代ギリシャの哲学者ディオゲネスは、犬儒学派(キュニコス派)の代表的な人物。社会の慣習や価値観に縛られず、自然と調和した生活を送る。
ディオゲネスは、物質的な富や名声を追求する代わりに、精神的な自由と道徳的な自立を尊ぶ生き方を選ぶ。
生涯には、多くの逸話があり、こんな例も。
--アテナイの市場で昼間にランプを持ち歩き、「真の人間を探している」と言ったとか。また、アレクサンダー大王が何か望むものがと申し出た際に、 「陽の光を遮らないでほしい」と答えたという話も。
これらのエピソードは、ディオゲネスがどれほど社会の常識や一般的な価値観から距離を置いていたかを示している。
ディオゲネスは、自らの信念に従って生きたまでである。こうした彼の思想は、その後、ストア派などの哲学にも受け継がれていき、また、ルネッサンス期の芸術家たちにも好まれ、絵画や文学の題材として取り上げられた。
ディオゲネスの哲学や教えは、物質的な豊かさよりも精神的な充実を求めたということである。
ディオゲネスのように、自分自身の価値観を持って生きることの重要性は一考に値すると云えよう。彼の生き方は自己実現と自由の追求において、ひとつのモデルとなっているのだ。。。