HERR*SOMMER-夏目

現代ドイツ作家・詩人の紹介を主に・・・

* 四人来て 三人帰ったな: 「ファウスト」第二部 第五幕 真夜中より

  真夜中に 四人の灰色の女が来て、ファウストの棲む宮殿から、

第一の女《不足》Mangel     第二の女《罪》Schuld、そして 第四の女《苦しみ》Nothの三人は、受け入れてくれないと観念して去ったあと、

鍵穴から そっと入り、残ったのは第三の女《憂い》Sorgeである。

 ・11398 :ファウスト:   Im Pallast 

四人来て三人帰った  話の意味はよく聞き取れなかったが

余韻のようにノートNoth(苦しみ) という言葉は耳に残った

そして 押韻するように陰気に聞こえたのは  確か トート Tod(死) だった 

それはともかく 虚ろで妖怪じみた にぶい声には違いなかった 

まだ自由な世界に 到達できたとは思ってはおらぬ 

だが 行く道から 魔法は遠ざけ 呪文は御法度にしたい 

そして 自然の中で 人間として立ち  生きがいとは何か 感じたい。

これまで暗い魔法に 足を踏み入れたり 冒瀆にも 身も世も呪ったりした 

だが今は どうしたら解脱できるか分からぬ 一日だけでもいい 

昼には 晴れやかな 微笑みを抱き 

夜には 虚妄の網から 抜け出せることができればと思う  

しかし    早春の野を 楽し気に帰っても 鳥が啼けば キョウ 凶と聞こえる

 そんなだから 明けても暮れても 迷信に付きまとわれ 

怪しい蔭や そんな兆しに 怯えてばかりだ・・>>>

・・ううっ 門から音がした 誰かいる?... 

   ・  11421 : 憂い Die Sorge:

ノーとは云えませんわね 気づかれてしまっては

 ファウスト: 誰だ 

 憂い :とにかく ここに いる者よ

 ファウスト :さっさと 立ち去るがよい 用はない

  Vier sah ich kommen, drey nur gehn,

   Den Sinn der  Rede  konnt' ich nicht verstehn, 

   Es klang so nach  als hiesse es  Noth 

   Ein dustres Reimwort folgte  <Tod>.

 Es tonte hohl, gespensterhaft, gedampft,

Noch hab ich mich ins Freye nicht gekampt.

Konnt ich Magie von meinem  Pfad entfernen

Die Zauber-Spruche ganz und gar verlernen..~11406..

     ファウスト」 第二部第五幕 真夜中