HERR*SOMMER-夏目

現代ドイツ作家・詩人の紹介を主に・・・

*ボブロフスキーの「サルマティアの時」:

         サルマティアの時:
ヨハネス・ボブロフスキーの詩集『サルマティアの時』は、1961年に発表され、東方の過去の原風景の形象化を試みたもので、ボブロフスキーが自らの戦争体験と、彼の育った土地である東プロイセンの歴史を織り交ぜながら、サルマティアという架空の地を舞台にしている。
サルマティアは、古代に実在した騎馬遊牧民サルマタイ人に由来し、ボブロフスキーにとっては、遙か過去の、空間と時間を越えた地点にあるユートピアのような存在だが、サルマティアの風景や人々、その文化や歴史を通じて、民族間の愛情や理解、そしてドイツ人と東方諸民族の関係を探求した。。。
 ボブロフスキーは、詩を通じて、民族の占有や土地との結合がもたらす不幸や罪を描き出し、それらを理解し、誤解を除去することを試みる。また、詩集には、政治的な観点から見た民族意識の終焉や、国家、国民意識の終りに近づく現代社会の描写も含まれている。。。
 
『サルマティアの時』は、ボブロフスキーの作品の中でも特に重要な位置を占め、彼の詩作活動と東独の文化政策の間の緊張関係を反映しており、ボブロフスキーの深い歴史的洞察と、彼の詩的な想像力が融合した作品となっている。。。
ボブロフスキーには、「サルマティアの時」以外にもいくつかの作品があり、詩集「影の国、河の流れ」は1962年に発表され、第一詩集「サルマティアの時」と密接な関係があり、また、小説「レーヴィンの水車小屋」(1964年)、詩集「風の茂みで」(1970年)など、多様な作品が存在するが、これらの作品は、ボブロフスキーの深い歴史的理解と文学的才能を示しており、彼の詩的世界をさらに探求することができる。。。
 
彼は、詩作によって、サルマティアの時代を、空間と時間を越えた地点にあるユートピアとして描き出した。
 
サルマティアは、古代に実在した騎馬遊牧民サルマタイ人に由来し、サルマタイ人は紀元前4世紀から紀元後4世紀にかけて、ウラル南部から黒海北岸にかけて活動したイラン系遊牧民で、紀元前7世紀末からウラル南部にいたサウロマタイに紀元前4世紀頃東方から移動してきた遊牧民が加わって形成された。
また、サルマタイはギリシア語で、彼らのいた黒海北岸地域をその名にちなんでサルマティアと呼ぶため、サルマティア人とも呼ばれる。
そしてまた、サルマティアという言葉は、後にポーランド・リトアニア共和国の貴族階級およびウクライナ・コサックの生活様式や思想などにおいて支配的だった文化現象、サルマティズムにも影響を与え、サルマティズムは、16世紀から19世紀にかけて、共和国の「黄金」時代と共に興隆した文化で、貴族階級が自らを東欧から中央アジアにかけて活動し多文化主義の社会を構成していた古代スラブの地に定住した遊牧民サルマタイ人」の出自から、東方地域に影響された特異な文化を形成しているのである。。