* ベルンハルトの長編「霜」:---- )))*
トーマス・ベルンハルトのデビュー作「霜」は、オーストリアの山間部を舞台に、失踪した画家シュトラウホの物語で、研修医の視点を通して、画家の独特な思想と、彼が住む寒村の住人たちとの交流を綿密に描き出している。
ベルンハルトの作品は、厭世的な世界観と心理の細密な独白で語られ、彼の文学の特徴を色濃く反映している。
「霜」は1963年に発表され、その後、ベルンハルトはドイツ語圏の代表的な作家として広く認知されるようになる。彼は孤独や自己解体のテーマを探求し、理想を追い求める人間の姿を鋭く描き、彼自身の生い立ちや経験、そして死という存在の限界に深く根ざしており、強い印象を残した。。。日本では、2019年に河出書房新社から翻訳版が出版された。*** >>
ベルンハルトの「霜」は、深い心理描写と厭世的な世界観で知られ、オーストリアの山間部にある寒村を舞台に、研修医の「ぼく」と失踪した画家シュトラウホの交流を通じて、人間の孤独と絶望を探求した。---物語は「ぼく」がある医師からの奇妙な依頼を受け、画家の兄弟であるシュトラウホを観察することから始まる。シュトラウホは20年間兄弟と会っておらず、12年前から音信不通なのである。
研修医は村での27日間を日記形式で綴り、6通の手紙を通じて下級医に報告する。
物語の中で、研修医は画家との長い散歩をしながら、彼の矛盾した言葉や行動、そして村の住人たちとの会話を通じて、画家の内面と世界観を徐々に理解していく。--- 画家シュトラウホの言葉はしばしば省略され、その断片的な発言が物語の中で重要な役割を果たす。。。
「霜」は、ベルンハルトの文学的な特徴を色濃く反映し、人間の存在の限界と、生と死の間の葛藤を描いている。。
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「霜」におけるシュトラウホの失踪は、中心的な謎の一つで、研修医がシュトラウホの観察を任され、彼の言動や思想を通じて人間の孤独と絶望を探求するが、シュトラウホの失踪については、直接的な説明はされない、が、彼の孤独な人生、厭世的な世界観、そして彼が表現する生の限界と死への執着が、行動の背後にあると推測される。
シュトラウホは、自然や時間、そして人間の存在に対する独自の見解を持っており、これらの思想が彼の行動に影響を与えているのだが、彼の言葉はしばしば「何もかもが粉々にされ、何もかもが解体され、すべてのよりどころが壊れ、確乎たるものすべてが塵と化し、何ひとつ存在しなくなり、ほんとうに、もはや何ひとつ存在しなくなった」という感覚を表し、彼の内面の混乱と世界に対する絶望感が書かれる。。。
このように、シュトラウホの失踪は、複雑な内面と、彼が感じている世界の冷たさや孤立に深く関連していると考えられ、登場人物の心理を深く掘り下げることで、強い印象を与えるのである。。。
「霜」における孤独感は、彼の作品全体に共通する重要なテーマで、孤独は人間の存在の根底にある普遍的な感覚として描かれ、登場人物たちが直面する孤立感を通じて、人間の内面の深淵が探られるのだ。
物語の中で、画家シュトラウホは、自然や社会からの隔絶を通じて、自己のアイデンティティと向き合うことを余儀なくされ、彼の孤独は、単なる物理的な状況を超え、精神的な孤立として表現されてる。。。
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ベルンハルトの作品における孤独感は、しばしば彼の登場人物が経験する社会的な疎外感と結びついており、周囲の世界との関わりの中で、自己理解と世界の理解との間にギャップを感じ、それが孤独感を生み出す。
この孤独感は、彼らが持つ厭世的な世界観と相まって、彼らの行動や思考に影響を与える。
「霜」では、孤独感は、人間の存在の限界と、生と死の間の葛藤を象徴し、孤独を通じて、人間の存在の本質に迫り、その過程で、人間の心の奥深くにある葛藤や苦悩を描き出している。。。