HERR*SOMMER-夏目

現代ドイツ作家・詩人の紹介を主に・・・

*ルクルスと ルクレティウス : ブレヒトより Ⅱ-3 (*20 ) AI.+

 老いた前将軍ルクルス。:

  彼は、嘗て、全盛期にアジアに出征。すると、ポンペイウスはこの時とばかり、陰謀を巡らし彼を排斥した。  ルクルスが真のアジア征服者だと崇められていることを承知の上で。

・ 紀元前63年初期。:            ローマは政情が不安定で、ポンペイウスは長期にわたり出征、アジアを竟に征服する。この将軍の凱旋も今を遅しと望まれていたのだ。

・緊迫がつづいていた或る日である。: 

ティベル河畔の宮殿の大庭園の一角で、小柄で痩せた男。大理石の階段に座り、訪問客を待ち受けていた。前の将軍ルクルスである。

出迎えていた客人は詩人のルクレティウス

  ・ ルクルスはルクレティウスを歓迎し、ホールへ案内した。詩人にゆっくり英気を養ってほしいと。だがルクレティウス無花果の実に手を伸ばしたものの、一口食べたに過ぎない。   

 さて、ひと息ついてのち、二人のあいだで交わされた話は、政治ではなく哲学の問題になったが、やがて、ルクルスは詩人が書いた教訓叙事詩「本姓について」に触れ、神々から賜った恩恵に関して、それを迷信として片づけてしまうことは危険であると述べたのである。

・すると詩人ルクレティウスはルクルスの見解に対し、豈図らんや反論した。  

       *ブレヒト散文集より Aus; B. Brecht: Die Trophaen des Lukullus.

     Suhrkamp Vlg.   S.304....  Geschichten in:  Prosa Band Ⅰ

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・ルクルスとルクレティウスについて:--->>>

ルクルスとルクレティウスは、古代ローマ時代の人物で、ルクルスは、贅沢な生活と美食を楽しむ政治家であり、彼の名前は「ルクルスの饗宴」という言葉にその精神が反映されてい.る。一方、ルクレティウスは、エピクロス主義哲学をローマに紹介、その教えを詩的な形で表現した詩人・哲学者である。。。

ルクレティウスは紀元前99年頃に生まれ、紀元前55年に物故した。彼の最も有名な作品は『事物の本性について』で、エピクロスの原子論に基づいた宇宙論を詩的に描きルネサンス期に再発見され、当時の思想に大きな影響を与えた。ルクレティウスの詩は、自然現象を神々の介入ではなく、原子と空虚の運動によって説明し、死後の世界を恐れることなく、この世での幸福を追求することを勧めたのである。。。>>>

ルクレティウスの思想は、無神論的な立場から、宗教や迷信を批判し、彼の唯物論的な世界観は、科学的探究の精神と合致して、現代の科学哲学にも影響を与える。

 ルクレティウスは、自然と人間の関係を深く掘り下げ、人間の感情や社会の構造についても洞察している。。。

ルクルスとルクレティウスの思想は、異なるアプローチを持ちながら、人間の幸福とは何か、どのようにして豊かな人生を送るかという普遍的な問いに答えを提供。彼らの教えは、単なる過去の遺産ではなく、現代にも有益な知恵となっているのだ。。>>>

 

ルクレティウスの詩について:--->>>

 ルクレティウスの詩は、古代ローマの哲学と文学の融合する作品で、中でも「事物の本性について」は彼の思想を集約した傑作であり、エピクロスの原子論を基に、自然現象の理解を通じて人間の恐怖を克服し、精神の自由を得ることを説く。ルクレティウスは、神話や迷信に頼ることなく、理性と観察によって世界を理解することの重要性を訴えた。。。

彼の詩は、6巻にわたる長大な作品で、紀元前1世紀のラテン文学の中でも重要な位置を占め、その美しさと哲学的深さから魅了。日本語訳もいくつかあり、古代ローマの思想と詩の魅力を伝えている。

ルクレティウスの詩は、単なる文学作品を楽しむこと以上に、人間の存在と宇宙の理解について深く考えさせ、その価値は色褪せることがなく、思索を促す力を持っている。