「・・友人が綿花について情報を流してくれたよ。勿論、そいつをごっそり買ったさ。電話での買い付けでね。すると 綿花の積み荷が、まだ海にあるうちに三倍に高騰したな。世界の綿花市場がてんやわんやだ。すると この船荷の主は誰かとなった。無論、わたしだったのだが。だが 信用調査されるや、医者と分かり 取引は即、キャンセルときた。これは不法行為だ。だから勿論、訴訟は起こしてやったさ・・」
「われわれ科学者はだね、ウィルヘルムくん、不合理な罪は黙認できぬのさ」とタムキン博士は云った。「だが、そういう状況になれば、金銭問題が絡んでくるからやっかいなのさ。・・money(金銭)とmurder(殺し)は同じMから始まっている。machinery(機械装置)、mischief(危害も)だ・・」
するとウィルヘルムは云った。mercy(慈悲)というのもあるな。
人情とは甘いmilkだ!..というセリフもマクベスにだったか うろ覚えに覚えているがね・・
「まあ、言うなれば、金儲けとは攻撃に他ならない。それがすべてだよ、ウィルヘルムくん」
Saul Bellow: Seize the Day!..
・ウィルヘルムの父親は元内科医で、今は隠退している。が、かなりの資産家。 だが、息子の生き方には不満で経済的援助は断っている。
一方、ウィルヘルムは成功を求めるがうまくいかず、離婚調停中の妻子の生活費のために、金銭上でも起死回生を目論んでいる。 その彼に商品相場に誘い投資するよう仕向け、経済破綻に追い込むタムキン博士、自称 心理学者。