HERR*SOMMER-夏目

現代ドイツ作家・詩人の紹介を主に・・・

* ディオゲネスに関する逸話 : クライスト奇譚集 より

古代ギリシアの哲学者ディオゲネスは、ある時、

「死後に埋葬されたいところは、どんなところでしょう・・」と訊かれると、

「野原の真ん中でよかろう」

「えっ!..なんですって?..」

「鳥や野獣の餌食になってしまうではありませんか・・」

「ならば、傍らにステッキでも置いておくがよかろう。・・」

「どういうことでしょうか?..」

「それさえあれば、追い払うことができる、何が来ようと、野獣が来ようと」

「追い払う?..どのように?.. 死んでいて、感覚もないのに・・」

「ならば、わしの死骸が鳥や獣に食べられようと、痛くも痒くもないではないか」

   H. von Kleist: Diogenes

Samtliche Werke, Hanser Verlag. ebd. S.284f... Kleist 奇譚集より

  ディオゲネスは「著名な哲学者たちの生活と意見」という奇書の著者として有名。これは10巻よりなり、真偽かまわず、逸話や名文句を収集した。