HERR*SOMMER-夏目

現代ドイツ作家・詩人の紹介を主に・・・

*たくらみと恋 : Kabale und Liebe

   

貴族で宰相の息子フェルディナントと市民の娘ルイーゼの悲恋を描いて成功を収めた戯曲に「たくらみと恋」があるが、これはゲーテと並び、ドイツ古典主義を代表する戯曲家シラーの悲劇作品で、シラーの言葉にこんな一節がある。:

  「とりとめのない談話も、偶然といってよい邂逅も空想豊かな男にかかれば、その情熱によって明白な証拠となりうる。  Ⅱ-13   導入部 

    **

          こんな疑惑がジュリアンの気持ちを一変させた。考えれば考えるほど心に恋の芽生えがあったのだが、それを封じてしまうのはわけもないことであった。

恋といってもマチルドの美貌、というよりは寧ろ、女王のような振る舞いと、すばらしい衣装に魅せられたに過ぎないのだ。つまり、こういう点からジュリアンはやはり、成り上がりにすぎず、田舎者の才人が上流階級の社交界にあらわれると、いちばん驚かされるのは美しい女によってなのであった。

 スタンダール赤と黒」 第二部・第十三章 

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* おしなべて 太陽が純金と・:「ファウスト」第二部より

 

     ・4728~5064 :

この箇所は対話形式の韻文で書かれ、4-5の揚音・強音が自由に、あるいは、相互に繰り返されていく。

      4955~ :

 皇帝の 玉座の間にて:

天文博士:Astrolog:    メフィストフェレスも小声で同じ言葉を繰り返している。:

 おしなべて太陽が純金といたしますれば 

水星 メルクーアは その使い役 

寵愛と給金を 当てに 働き、   

金星夫人  ヴェーヌスは 

誰彼となく 周りのものを惑わし  

朝な夕な 

色目を送って いるのでございます。    

また  月 ルナは  まだ 情けの知らぬ 

我儘な小娘でして、  

 軍神の火星マルスは 

その威力で脅かしますが  

 木星  ジュピターは 

それは美しいのでございます。 

ですが 土星  ザトゥルンは 

馬鹿でかいとは申せ 

遠くに見えますゆゑ小さいもの  

目方は重くも値打ちは軽いのと 

同様でございます。

ですから 太陽神ゾルに   

月姫 ルナが寄り添ゑば

金と銀とが並びますゆゑ、 

世界は この上なく明るく 

陽気になり、  こうなりますと

手に入らぬものはありますまい 。

     

        * 4971 ~:

         Kaiser :  皇帝

なにやら言葉が二度づつ聞こえてくるが 

 納得はできかねる。

・その場に居合わせた者の呟き:Gemurmel

   それがどうだっていうの。 

 戯言に黴がついたようね

  まるで 暦売りの口上か 

錬金術師の口真似そっくり。

これまで何度 聞かされたことか 

そして そのたびに 

騙されてきたことか。あれもまた

まやかし者に違いない。  

Die Sonne selbst, sie ist ein lautres Gold,

Merkur, der Bote, dient um Gunst und Sold,

Frau Venus hat's euch allen angethan.

So fruh als spat blickt sie euch lieblich an;

Die keusche Luna launet grillenhaft,

Mars, trifft er nicht , so draut euch seine Kraft.

Und Jupiter bleibt doch der schonste Schein,. 

       ~4961..f:id:zkttne38737:20200125092402j:plain

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

* トルストイの「アンナ・カレーニナ」: 第一部 

 

「幸福な家庭は似通っているが、不幸な家庭はその様相はさまざまである。」

アンナ・カレーニナ」のこの冒頭部は、よく知られた一節だが、この長編の第一部の11には、ハイネの詩の一節も挿入されている。: 

 抑えがたき この世の欲情に打ち勝てば

 どんなに救われることか 

 たとい叶わぬとも歓びは残りし

        ****

「だけど一体、どういうことだね」

オブロンスキーは苦笑した。

レーヴィンの心の中が彼には分っていた。

「つまり、こういうわけだ。仮に結婚しているとする。きみはもちろん、妻を愛している。ところが、ほかの女に惹かれることだってある」

「わるいが分からぬ。満腹しているときに、パン屋の前を通りかかり、ひとつ失敬するようなものだから。それが分からんな。」

オブロンスキーの目が、この時いつもより輝いていた。

「どうして。 パンも時にはいい香りがしてくると、手に取ってみたくなることがあるじゃないか」

    **

  因みに、この詩の一節はヨハン・シュトラウスの有名なオペレッタ「蝙蝠」のなかでも使われている。 

 Himmlisch ist's ,  wenn ich bezwungen

   Meine irdische  Begier ;

    Aber noch wenn's nicht gelungen,

   Hatt' ich auch  recht hubsch Plaisir !...

* 滑稽歌劇 :「赤と黒」 より

 

 'おお 春四月 定かならぬ輝き 

恋愛も これに似て 陽の輝きに 

あふるるも やがて次第に 

雲はすべて奪い去り・・ '  

      シェイクスピア 

 第一部第十九章 導入部より 

   ***

 もし革命が勃発したら、どうしてジュリアン・ソレルがロラン(フランス革命時代の政治家)の役割を演じないことがあろう。

 そしてあたしがロラン夫人の役割を。スタール夫人の役割よりこのほうがまし:

身持ちわるいことは現代では一つの障害になる。必ずもう二度と非難されるような過ちを犯さないようにしよう。また、そんなことをしたら・・ 

 マチルドの夢想は、まじめなことばかりではなかった。ジュリアンを盗み見ると些細な動作にもたまらない魅力を感じていた。       Ⅰ-19.

*「砂時計 」: ハイネ  

 

砂時計の砂が わずかづつ 

 落ちていく

妻よ 愛しいひとよ

死が わたしを引き裂いていく

妻よ 死がお前の腕から 

 わたしを引き裂いていく

抵抗しても徒労に帰すだろう 

 死は 魂まで引き裂いていく 

わが魂は恐怖で死にたい思いだ 

死は棲み慣れた家から魂を追い出す

魂は喜んで棲みついたのに 

魂は震ゑおののき 落ち着きまで失う

 どこへ行ったらいいか

魂は篩(ふるい)のなかでもがく蚤のよう

抵抗しても もがいても  

    のたくり 回っても

どうすることもできない

男と女 魂と肉体の この一対は 畢竟 

別離が定め・・

運命とは無情なもの・・

 訳 : HERR*SOMMER-夏目  

Heinrich Heine :

Ich seh im Stunden-Glase schon...

 Samtliche Gedichte in zeitlicher Folge  

 Insel Vlg.  2007    S. 917   

 

 

 

*奇(くす)しき薔薇 :

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バラの香りの愛(いと)ほしく 

息吹の真っ赤に燃ゑしとき

愛しきバラの香よ !

そは聖母マリアの御慈悲により 

バラは奇しき薔薇となり・・

 

されど タンポポ

 花咲き終わるや 

そが冠毛は風に舞ひ

  四散して 

遠く近くに着きしなり されど 

そが繰り返し繰り返すは

閉ざされたる生成と死か 

されば そが仮象の世界から 

解き放ち賜ふは

聖母マリアのおわします世界 !!...

ここにおいて仮象の世界は 

ロゴスの真理と溶け合ひて 

 導きたまう

さあ モルガーナよ 妖精よ

みな一になり 

新しき世界に 

  戯れ  遊べ !!... 

         ***

E.ランゲッサーの聖なる世界より

 

 

* 半獣神風: 異才の詩人 デーメル:

      俄に 広間は会衆で一杯になった。いよいよデーメルが現れた。すると彼は檀の真ん中に進んで無造作に一礼すると、すぐ朗読を始めた。彼は熱情に満ち屈強で、また宣教師風でもあり、更には半獣神風で異彩を放っていた。

しかし今や詩が可視的なものへの関心からさり、ニーチェの「夜の歌」を朗誦すると、デーメルの声はいよいよ天翔った。それは憧憬と恍惚のうちに歌曲リートに近づいていった。

恐らく12-13世紀中世の英雄時代の吟遊詩人・トルバドゥール; troubadoursは こういう風に朗読したに違いない・

  カロッサ「美しき惑いの年」 より