HERR*SOMMER-夏目

現代ドイツ作家・詩人の紹介を主に・・・

* 「ファウスト」真夜中 より

Faust:       Entferne dich :  さっさと 立ち去ることだな 用はない:   

Die Sorge:  Ich bin am rechten Ort:    いいえ わたしは居させてもらうわ  

ファウスト: 始めは 怒りが込み上げてきたが、やがて、 気を静めて:

ならば 呪文は 口にせぬことだ

憂い:    わたしの声は 耳から入っていくのではないわ 直に こころに 響くのよ     不安とともに・・ ですから 呪われたりもするけど でも あなたには憂いなど 無縁かしら  ~11432

 Stets gefunden ,nie gesucht /   So geschmeichelt  ,wie verflucht.

Hast du Die Sorge nie gekannt ?....... /

 

 

 

 

*ダンテ「神曲」:天国篇 第11歌 より

おお 人間!  その純(おぞ)ましさ:   - ある者は法学を ある者は医術を追いもとめ -    ある者は司祭にならんとす また ある者は詐術に手を伸ばし -  はたまた 快楽に酔い 懶惰(らんだ)を貪( むさぼ)る輩もいる・・- わたしは だが それらの塵労からは解かれ 

ベアトリーチェに案内され 天界を目指した そして-  霊が戻ってくると おのれを定着させた すると -  話しかけてきたトマス・アクィナスの零体から かく語るを耳にしたのだ。: -  輝きは増し 永遠の光を見つめていると 汝が思ひは判る だが-  きみは言葉を解せず戸惑ひ分かり易くと願った・・- さても 天使であれ人間であれ 造られた神の摂理は なぜに捨て賜うと呼ばわるイエスのために-   二人の権能者を選び左右に配し 道しるべに定められたのだ。--  一人は天使で最高位階の 愛のセラフィムを想起させ、-   もう一人は知恵深く知に輝く天使ケルビムを想起させ...- 聖フランチェスコであった・・ *ダンテ「神曲」天国篇 第11歌より

 

 

 

 

* 激しい恋愛:「赤と黒」より

    バッソンピエール時代のフランスの英雄的な感情に、恋愛をみてとっていた彼女。...:

 

    バッソンピエール(1579-1646)は、元帥にして外交官、ホフマンスタールの短編「バッソンピエール奇譚」でも知られているが、突然、マチルドは上気したのだ。

  あたし恋をしているのだわ。恋をしている。

    若いのですもの、才知だって 備わって。ですから、恋をしていないなんて、あっては いけないのよ。刺激にこそ 命は あるのですもの。・・

 すると その時マチルドは「新エロイーズ」の恋愛描写を思い浮かべた。

  勿論、激しい恋愛を。 生ぬるい恋愛など ありえないのだ。

      第二部 第十一章「若い魅力」 より 

 

 

      

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*プルーストより

     ピアノの鍵盤では愛情・情熱・勇気・平静といったキーが他のキーと異なって、作曲家の手にかかると目覚めさせてくれる。

そのように、作曲家ヴァンの楽節には、充実した内実が感ぜられた。

  スワンは、いつしか、クレーヴの奥方が憶い出していた。

  プルースト失われた時を求めて」 より

 

*「クレーヴの奥方」: 17世紀の閨秀作家・ラ・ファイエット夫人の代表作。

 

 

*アヤックスの盾には絡みつく蛇が:

       * 8909- 9126  :

    ・   この箇所はフォルキアスの台詞、「薄曇りの朝、輝きまばゆく真昼の太陽よ!.」以下、第三幕その1の最後までの場面であるが、それまでのヤンブスのトリメーター、短長・抑揚格の3音格詩がトロケーウスの長短・揚抑格のテトゥラメーター、即ち、4 歩格・4詩格からなる詩行にとって代わっている。

  因みに、テトラtetra-とは、vier、4を意味し、これも古代ギリシアの悲劇に倣ったものである。

  フォルキアス :  見てのとおり アヤックスの盾には 絡(から)みつく蛇が描かれ 

テーベを攻めた7人の勇士たちも その盾に意味深い図柄をつけておった。夜空に輝く月や星も 女神も 英雄もあった。

  ・9035 ~:

梯子(はしご)や剣や松明(たいまつ)や 威嚇する攻め道具も 様様な図柄になった。また ゲルマンの勇士たちも 先祖代々 そうした紋章をつけ、獅子や鷲 鳥獣の爪や嘴   水牛の角も鳥の羽も 孔雀の尾も薔薇もあった。・・金銀 青赤の縞模様の図柄も  大広間に 列をなし掛かっている。

*Ajax fuhrte ja geschlungne Schlang'  im Schilde,    Wie ihr selbst gesehn. 

 Die Sieben dort vor Theben trugen Bildnerey'n  /  Ein jeder auf seinem Schilde ,reich bedeutungsvoll.    /Da sah man Mond und Stern'   / Am nachtigen Himmelsraum,

Auch Gottin, Held und Leiter ,Schwerter,   / Fackeln auch......

          ***  

*アヤックス  Ajax:  アキレスに次ぐ英雄。 カサンドラを誘拐した。

・7人の勇士: ティドイス、カバノイス他で、テーベ Theben古代  ギリシア・ベオティーエンの首都を攻めた

   **この韻律学・Metrikに関しては、ハンザー版ゲーテ全集、18-1. Letzte Jahre 1827-1832.のなかのKommentar,Faust Ⅱ・3 Akt・S.922-S.1023.を参照。

Aus ; GOETHE SAMTLICHE WERKE 18-1     Letzte Jahre 1827-1832  HANSER VERLAG 

      Munchner Ausgabe   S.922-1023. 

 

 

 

 

    

*トロヤの娘の合唱隊とフォルキアスとの悪口合戦:

       * 8810~ 8825  :

 この箇所は、詩句問答Stichomytie 、隔行・対話形式で書かれ、トロヤの娘たちによる合唱の女たちと、フォルキアスの間で交わされる華々しい口争いで、売り言葉に買い言葉。互いに侮蔑と誹謗の言葉を投げ合う悪口合戦。

  * 8810  ~:

・合唱を指揮する女:Chor-fuhrerin :

美し方のそばでは 醜女(しこめ)は いっそう 醜くみえるのね

・フォルキアス Phorkyas :

 賢明なひとのそばでは わからずやは 一層 分らず屋だ

・合唱の女⒈ Choretide 1. :-- 父はエレブス  母は暗黒の闇と名乗るがいいわ

・フォルキアス:  恥知らずのスキラと従姉妹だな

・合唱の女2.:  あんたの系図には いろんな妖怪の名が書いてあるのね

・フォルキアス:  地獄で親戚でも探すがいい

・合唱の女3.: 地獄にいる女でも あなたには若すぎて 手に負えないわ

・フォルキアス : そういうお前には 盲目の爺さんがお似合いだ 色目を使うがいい

・ 合唱の女4.: オリオンの乳母が あなたの玄孫(やしゃご)ね

・フォルキアス : お前はハルビエの子だな 

・合唱の女5.: 何をお食べになれば そんなお痩せで骨皮ばかりなのかしら

・フォルキアス : お前の 吸う血なぞ 真っ平ごめんだ 

・合唱の女6.: あなたは死骸も同じ。なのに まだ死骸に ありつきたいのね

・フォルキアス :  減らず口の中で光っているのは ヴァンビールの歯だな

・合唱を指揮する女 : 正体を暴(あば)けば その口は二度と開けられないわ

・フォルキアス :  おまえから先に名乗るがいい そうすれば謎など一目瞭然だ

        ***

*Wie hasslich neben Schonheit zeigt sich Hasslichkeit!..(8810)

 Wie unverstandig neben Klugheit Unverstand !...(8818)

Das deine stopf' ich  wenn ich sage wer du seyst..(8824)

 So nennt dich zuerst ,das Rathzel hebt sich auf..(8825)

   **

*エレブス Erebus: 地下の最も深い暗黒の底の意。

*スキラ Scylla : 海の神 グローカス Glaucusに愛されたニンフ

キルケ Circe によって怪物の姿に変えられた。メッシーナ海峡に身を投じ、六つの頭を持ち、男をくう海の妖怪。

*ティレジアス Tiresias: テーベの盲目の老預言者

*オリオン Orion: 巨人で美しい漁師、狩人。

*ハルピエ Harpyie : 少女の頭をした鳥の怪物。 ハルピュイア

*ヴァンピール  Vampyr : 男の肉を喰い、血を吸う吸血鬼。

    

        

 

 

 

 

 

* 手でれれなければ・・:ゲーテ「ファウスト」第二部 4917~より

メフィストフェレス: Mephistopheles :      なるほど さすが学者ですな 手で触れなければ 何マイルも 遠くのものと 変わりない  握らなければ  無きも同然  数えてみなければ 眉唾(まゆつば)ものというのですな・・                                               秤にかけてみなければ 重さもなく お金も みずから鋳造しなければ  通用しないと

皇帝 Kaiser;   なにを言っておるのだ この窮乏の時に ・・断食の折りの説教のように申しても 何の役に立つ こんな評議には 飽き飽きだ  欠乏しているのは金なのだ 

それなら 一層 金を造り出してみよ・・   

   Goethe Faust : 2 Theil

Mephisto:

Was ihr nicht tastet, steht euch meilenfern,

Was ihr nicht fasst , das fehlt euch ganz und gar,

Was ihr nicht rechnet, glaubt ihr, sei nicht wahr,

Was ihr nicht wagt, hat fur euch kein Gewicht,

Was ihr nicht munzt, das ,meint ihr , gelte nicht . >>

Kaiser:

Ich habe satt das ewige Wie und Wann,

Es fehlt an Geld, nun gut, so schaff' es denn !!... 

 

*マルロー:「王道」より

「いや違う」とぺルケンは云った。「あっちの女だ」

      《サディストかな、この人》とクロードは思った。噂によると、ペルケンはシャム政府の依頼で未帰属部族のもとに派遣されたとか、ビルマ東部のS.高原地方やラオス辺境地方の統合にのりだしたとか、バンコク政府と、ある時は友好的だが、ある時は険悪であるとか、最近では批判も受け付けぬ力への情熱が見受けられるとか、その彼にも衰えが見えてきているとか、色好みになっているとか言われていた。

しかし、船の上では女たちに取り囲まれていたのだ。

《何かがある。だが、サディズムじゃない》   ペルケンはデッキチェアーの背に頭を持たせかけると、執政官の仮面が明るい光の中に顕れ、目のくぼみと鼻の影の明暗を際立たせていた。煙草の煙が立ち上り、濃い闇に消えていった。

                         A. Malraux「王道」より

*クロード: --フランス政府から派遣され、クメール遺跡の発掘を企てる26歳の青年。

ペルケン:--ドイツ人らしき伝説に取り囲まれ、シャム政府の依頼で未帰属部族の統合に乗り出したこともあり、幾多の酋長とも親しく、クロードの計画に心を寄せている。

 

 

 

 

 

 

 

 

*エルフェ(妖精)の歌; メーリケ

夜ふけに 村の夜番が叫んだ--: 11時(エルフェ)だ!..

すると 森で寝ていた小妖精は 早合点

すぐに 共鳴した :-- あたしがエルフェよ!....

誰かが じぶんの名を 呼んだと思ったのだ

はて 鶯か それとも ジルベリットか

 妖精が 眠い目を こすりつつ

  夜道を とぼとぼ 行くと 

 煉瓦塀に ホタルが光っていた...))

「おや あの小窓から洩れてくる 光は なにかしら・ 

     婚礼でも しているのかしら

  ご馳走 食べたり 踊ったり 覗いてみようか

 すると エルフェは石塀に頭こうべ  ゴツンとぶっつけた

 あら いやだ!....ほら みたかい エルフェさん !..

          クスクス クスクス クスクス ・・(((  

 どこからともなく 微苦笑が零こぼれてくる (((...

     訳: :HERR*SOMMER-夏目 

   Aus: Mörike  Gedichte   Elfe ,   Reclam

      * Elfenlied:

 Bei Nacht im Dorf der Wachter rief :  "Elfe !"

Ein ganz kleines Elfchen im Walde schlief ---

                  Wohl um die Elfe ! --

Und meint, es rief ihm aus dem Tal

Bei seinem Namen die Nachtigall,

Oder Silbelit hatt'  ihm gerufen.

Reibt sich der Elf die Augen aus,

Begibt sich vor sein Schnecken-haus,

Und ist als wie ein trunken Mann,

Sein Schlaflein war nicht voll getan,

Und humpelt also tippe tapp

Durchs Haselholz ins Tal hinab,

Schlupft an der Mauer hin so dicht,

Da sitzt der Gluh-wurm , Licht an Licht.

"Was sind das helle Fensterlein ?..

 Da drin wird eine Hochzeit sein :

Die Kleinen sitzen beim Mahle,

Und treiben's in dem Mahle,

Und treiben's in dem Saale ;

Du guck ich wohl ein wenig 'nein !"

--Pfui, stosst den Kopf an harten Stein !

Elfe , gelt, du hast genug ?   Guckuk !   Guckuk !   

【脚韻】; rief- schlief,  aus-Schneckenhaus, tapp-hinab,

  dicht-Licht, Fensterlein- sein, Mahle- Saale,    

  Nein-Stein,    usw.  Vgl. :  Tal- Nachtigall,

Mann- getan,  genug- Guckuk,

       Erste Ubersetzung ; 2004.10.7. Ubersetzte von; M. Natsume

 

*「シュレミールの不思議な物語」から

ドイツ人にもなれきれず、故郷フランスも異国と感じていた詩人の話。彼はある時、新聞を手にし コッツェブーを隊長とする学術探検隊が近々、北極をめざし組織されたというニュースを目にする。すると、コッツェブーの斡旋で、かねてからの願望が思いもかけず実現する。

時は1815年の6月。南太平洋、及び、世界全般におよぶ調査探検隊の随行科学者に任命され、ブラジルやチリ、カムチャッカやマニラ、喜望峰、ロンドンと廻り、ロマンチックで異国への憧憬を満たしてくれる三年間を過ごす。これは彼の生涯でもっとも、豊穣な時期であり、これによって精神は種々なイメージと素材の宝に満たされ文筆活動の基盤となっていく。 

 この髪を垂らし上品な顔立ちの長身な詩人、シャミッソー詩集は50歳の坂を超えた1831年に、ようやく上梓されたが代表的な詩篇は「女の愛と生涯」Frauen-Liebe und Lebenで、他方、小説では「ベーター・シュレミールの不思議な物語」Peter Schlemihls wundersame Geschichteで、この作品は、友人のフーケから、「旅で、すべてをなくしてしまったのではなかろう、影までも!?」と水を向けられたことが機縁となり執筆された男の奇譚なのである。それに加え、別の機会に、ラ・フォンテーヌの書物を捲(めく)っていて、こんな場面に遭遇したことも動機となっている。つまり、愛想のよい男が、或る席上で云われると何でもポケットから取り出して見せたのである。

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