HERR*SOMMER-夏目

現代ドイツ作家・詩人の紹介を主に・・・

* ヴォルフの「何処にも居場所はない」:

*Christa Wolf;クリスタ・ヴォルフ:「どこにも居場所はない」短編 79. ともにみずから命を絶った短編の名手で簡潔な文体で描くクライスト1777-1811,とカロリーネ・ギュンデローデ1780-1806,との、( 因みに、前者は34歳、後者は26歳で夭折している)1804年にお…

* さっと 立ち去ることだな: 「ファウスト」真夜中

Faust: Entferne dich : さっさと 立ち去ることだな 用はない: Die Sorge: Ich bin am rechten Ort: いいえ 居させてもらうわ ファウスト: 始めは 怒りが込み上げてきたが、やがて、 気を静めて: ならば 呪文は 口にせぬことだ 憂い: わたしの声は 耳からで…

* この不届きな 邪魔者めが・・: 

9435~ 41行: Faust; このファウストの台詞は古代ギリシアのトリメーター、即ち、3音格詩で書かれている。: この不届きな 邪魔者めが 厚かましくも 押し寄せてきたか こんな非常なときに 無意味な騒ぎは 許されまいぞ 美しい使者とて 悪い便りをもたらすは …

*お二人は 次第に 身を寄せ合い・・:

前回はヘレナとファウストの愛の告白の場面だったが、それを讃える合唱部,Chor:9385-9410行は、トリアーデ、即ち、1.シュトローフェ2.アンチシュトローフェ、そして3.エピシュトローフェの構成で書かれている。 ・9401~: お二人は 次第に 身を 寄せあ…

* ねえ どうすれば あのように 美しく :愛の告白

*9377- 84行 :Helena und Faust この箇所はヘレナとファウストとの愛の告白の場面で、毬を互いに投げあい受け取るように、言葉と意味を交わしながら、二人の心がやさしく結ばれてゆく。韻はヤンブスの5脚で、無韻のブランクフェルス、そして脚韻はパールライ…

*みずから引き起こした罪を この手で・・:

9246~ 72 :Helena : このヘレナとファウストの対話の場面は、9192以下、そして、9333-45のFaustの台詞や、9356-76のヘレナとファウストの対話の場面と同様、それまでのトリメーターに代わって、近代的なブランクフェルス、抑揚・短長格の5脚無韻詩で書かれ…

* 遠くで 白鳥の啼くのが・・:「ファウスト」第二部 「ヘレナ」 より 

*9078- 9121 行 :合唱 より この箇所も前の合唱部と同じ構成から成り立っている。即ち、1.フォア・シュトローフェと2.シュトローフェ、3.アンチ・シュトローフェ、そして4.エピ・シュトローフェである。 9099行 ~: 3の箇所 から :-- けれど おや …

*お黙り お黙り 嫌らしい目つきで・・:  

8882- 9808 行 :合唱部 この箇所は4節よりなり、1.Vor-Strophe 5行と、2.シュトローフェ8行、3.アンチ・シュトローフェ8行、4.Epi-Strophe の6行からなる三和音である。(*因みに、4.のエピ・オーデ Epi-Odeとは、ギリシア劇における末段のこと…

*イリオスの城壁は まだ残って・・:「ファウスト」第二部 より 

・スパルタのメネラス王の 宮殿の前 Vor dem Pallaste des Menelas zu Sparta *8697- 8753 行 : ・この合唱部の箇所は、9節からなっていて、1と2はそれぞれ5行づつ、3と4はそれぞれ6行づつ、そして5節目はメソーデといって、中間節となっており、ま…

*悲しい 囚われの女たちよ: 

*第二部 第三幕 ヘレナ より : ・ 次の合唱部の歌は、全体がトロケーウス (抑揚・長短格)のリズムで書かれている。: 未来に起こることは 何もわからないわ お妃さま ご安心あそばして お城へいかれますよう よいことも悪いこととも 予期せぬときに 訪れるの…

* 乙女の祈り  メーリケ

星は きらめき 鶏の鳴く 朝まだき 乙女は かまどに 火を おこす 炎のかがやき うつくしく 火花が 飛び散り 覗いては 乙女の 悲しみ ますばかり そも 乙女の 胸に 夜中に こつぜん 顕れいでし 彼が夢の 思ひの深き なればこそ すると 泪が あふれ ぽたぽたと …

* 唱歌 鳥のさえずり   ズィーモン・ダッハ

衝動に 駆られたように 森にゆくと 森は 鳥のさえずりで 辺りいちめん 響き渡っていた さあ 無辜の子らよ 純朴なる 民よ おまえたちの メロディーの なんと 爽やかなことか 愁いなく 善きこと 神を讃え 早朝から 夜おそくまで いそしみ 励み 啼きつづける お…

*夏は夜:「枕草子」より :

Im Sommer ,ich mag die Nacht gern, Nicht nur wenn der Mond scheint, sondern das Dunkel auch, Als die viele Gluhwurmchen einander die Wege in ihren Flugen kreuzen, Oder als es regnet auch ...... ・夏は夜。 月のころはさらなり。 闇もなほ。 蛍…

*カッコウと負傷帰還兵: 

カッコウが啼いている。その啼き声は、辺りに響きわたり木霊している。すると、その啼き声に目ざめた夫は、かれは負傷帰還兵であったが、手足や体を思いきりの伸ばすと、心地よさそうに呻き声をあげた。そして傍らの妻の手をつかもうとした。だが、妻はその…

*意識的な散文 :《西東詩集》より ⑥

ゲーテの晩年になった「西東詩集」は、詩的様式が散文に著しく近づいていった。そこには体験内実と表示される意識との間に、<距離>があったからである。故に、そこでは半ば抒情的に教訓が語られるという表現形式が多々見られるのである。言い換えるならば、…

*第二の青春 マリアンネ:「西東詩集」より

ゲーテ晩年になった「西東詩集」の萌芽として、新たな恋愛対象として出逢ったマリアンネ・フォン・ヴィレマーがいる。このマリアンネはズライカとして「西東詩集」に重要な形姿として現われてくる。つまり、そこには最後の恋愛体験としてのマリアンネ体験に…

*異国の詩人、ハーフィス : 「西東詩集」 より ②

さて、「西東詩集」の理解には次の三つの視点からみてみるといい。 その①はゲーテが遠い場所、東洋に目を向けたのは何故か、そして異国の詩人ハーフィス(1320-1389)に模範を執ったのは何故かということ。 その➁はいくつかの書からなるこの詩集の内実とその区…

*「西東詩集」 ゲーテ 覚え書き

「西東詩集」West-Ostlicher Divanはゲーテ晩年(65-66歳)の作である。1749年生誕のゲーテは1832年に物故するまで、83年という星霜を生き抜き、かつ、その大半を休むことなく精力的に活動しつづけた文豪・詩人であり、その間にはワイマールという小公国で宰相…

*戦後ドイツ短篇 クルツゲシヒテの タイトル考

*各作品のタイトルには、時代の状況もまた、反映されているものである。 レクラム版より、50作品のタイトルから。 ◇ 語られた時代: ❶ 世界の裏表 戦時下における現実: 1.「陽動作戦」W.シュヌレ 陽動作戦とは味方の真の作戦を隠し、敵の判断を見誤らせるため…

*御復活前の七旬節の日曜日:  ランゲッサー

人類は ふかきこころで待ち望む 石からさえ血のにじむ孤独のふちの悲しみから 肉体は樹木や動物にも 朋友とならんことを望み 溢るる愁ひの呪縛から解き放たきと おお 愁ひに満ちた苦悩よ !.. 清水や棕櫚の樹や繁みに向ひ 愛のエクスタシーのなかで腕を拡げ …

*母なる自然: メーリケ解明

*1875年のメーリケの死後、彼の才能を理解するひとは、ほんの一部にすぎなかったが、19世紀末になると次第にシュヴァーベン・アレマン地方で評価されはじめ、その後、H.ヴォルフWolfによってドイツリートと して作曲されると広く広まり、 メーリケの評価は今…

* 抒情詩人 : メーリケ .

* ゲーテ以降で、その多様性と独創性でメーリケほど抒情詩において抜きんでた詩人は、そう多くは見当たらない。が、彼の生涯は決して耀いていたのではなかった。寧ろ、憂慮に富んだものであった。zB.弟の死、姉の衰弱、別の弟カールの政治活動による拘禁、ま…

*メーリケ:書簡集 より

1875年6月4日、シュトゥットガルトで亡くなったメーリケ(享年71歳)は、それより10年前に、すでに詩作は衰退していたが、最も旺盛だったのは1837年から38年にかけて(33歳から34歳)で、38年には150篇の詩を書き一冊に纏(まと)めていた。 死の20年前に出た1855…

*「アンティゴネー」  ソフォクレス 

ソフォクレスによって書かれ、前441年に上演されたギリシア劇「アンティゴネー」は、攻めよせた敵方の骸(むくろ)を葬(ほうむ)ることを禁ずる掟(おきて)に、敢然として逆らい、死に処せられるオイディプスの娘、アンティゴネーの悲劇だが、そこに出てくるアン…

*ヘレナとファウストと悪魔メフィストの闖入・ ゲーテ「ファウスト」第二部より

*第二部・第三幕 ⑵ から 城の中庭でのファウストと絶世の美女ヘレナとの愛の告白の場面(9377~84) ここでは毬を投げ、毬を受けるように、言葉と意味を交わしながら、心が結ばれてゆく場面 ヘレナ: ねえ、どうすれば あのように美しく お話しできるのから。 …

*「古代ワルプルギスの夜」: 魔女 エリヒトーの独白:

*場面は: ファルザスの古戦場で、辺りは 暗黒である。 魔女・エリヒトーの独白 : ハーイ、あたしはエリヒトー、夜の魔女よ 毎年のことだけど、今宵も 魔女たちの祭りに 参上したわ やくざな詩人たちが、大げさに悪しく言うほど 不気味な女では ないのよ 褒め…

*わたしは世界が明けるのを見た;「仔羊の回帰線」序 より

黄金に輝く微笑みのなか 世界が明けるのを見た その世界は 深い秩序ある映像として鮮明になり 戯れているように形作られてゆき 平生なら謎に満ち 眼には見えないのに 植物においても 動物においても 人間においても あまねく清らかなものには 謙虚に 誠実に…

*「語り得ないことに関して、人は 沈黙していなければ ならない」:

文学史家、K.ロートマンの著から: 「オーストリアはウィーン生まれのヴィトゲンシュタイン1889-1951は、生涯にわたって言語による表現記述の可能性と限界を思考した著名な哲学者だが、<語りうるもの>の領域、zB.自然科学などは、はっきりと語り、<語り得ない…